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子どもの表情と仏像

2022/01/19(水) 13:05 | izawa

 今から30年くらい前と思いますが、当時、人の顔の表情をビデオに録画をし、口、目と鼻、そして眉と額(ひたい)の三つの部分に分け、それぞれの部分の変化の組み合わせから、情動(感情の動き)を特定していく方法が開発されて、表情を詳細に分析することが可能になったそうです。

 それを用いた新生児や乳児の表情の分析の研究があります。それによると次のようなことが分かりました。

(新生児)
  → すでに嫌悪、興味、満足などの情動を表出いているのではない
    かと考えられる。
(3か月ころ)
  → 悲しみ、驚き、喜びなどの表情が現れる
(6か月ころ)
  → 怒り、恐れの表情が現れる。

 つまり、よく言われる「喜怒哀楽」の表情は、生後6か月くらいまでには現れる、ということです。そして、別の研究で、これらのような表情は、生まれつき目が見えない乳児であっても基本的に出現することが分かっています。

 そこから言えるのは、それらの表情は「生得的に準備されているのではないか?」と考えられるということです。ということは、生後間もなくから母親など周りの大人はいろいろ働きかけをしていくのですが、「表情が生得的に準備されている」としたら、周りの大人は、働きかけの中での子どもの表情を読み取りながら、あるいは確認しながらコミュニケーションをしていくということになります。
 つまり、情動を介しての情動によるコミュニケーションが行われていくということです。それによって、子どもの表情がどんどん現れてきます。

 さて、以前テレビで仏教の仏像を作る「仏師」と呼ばれる方のお話を聞いたことがあります。
 木の仏像を作るとき、木をノミで彫っていく中で、仏の像を作るというより、木の中から仏が現れるのです、とおっしゃっていました。そして、仏像が出来上がった後、人々の祈りによって仏像に心が入ります、ともおっしゃっていました。

 もし、子どもの中に人間の情動の表現である「表情」が、生得的に準備されているとしたら、周りの大人の情動によるいろいろな働きかけによって、子どもの表情が現れてくるのでしょう。そして、3才頃から自分の、そしてほかの人の「心」の存在が意識されてきます。

 こう考えると、まずは3才頃までは、周りの大人が子どもさんに対して豊かな働きかけをしていきたいものです。仏像で言いますとまずは仏像を作るということです。そのあとは、仏像は仏師の手を離れ、たくさんの人々の思いの中に置かれます。子どもも、3才を過ぎるころから、大人中心から周りの子どもへとかかわりの範囲が広がり、経験も広がっていきます。仏像で言いますと「心」が入っていくのでしょうね。

 今回は子どもの表情のお話をしました。子どもに対するどういう働きかけが良いのか悪いのかを語り出せば、到底ここでは収まりきれませんので、また別の機会にいたします。ただ、「表情が乏しいな」と感じられる子どもさんがいたら、お父さん、お母さんと少しお話をさせていただいたら良いかもしれません。

 今回は以上です。