イチロー選手はもちろん自閉症ではない
2021/11/24(水) 13:36 | izawa
前回のブログでもご案内しましたが、11月28日(日)に開催予定の「第21回 札幌療育セミナー」では、自閉症と繰り返し行動やこだわり行動の関係についてお話をする予定です。
さて、楽しい広場の推進する「発達療育」では、自閉症に関して「自閉症は心の理論が欠けている」という、認知心理学者のウタ・フリス氏の言語・認知障害説を理論の基盤としています。
心の理論とは、「人の心の状態を推測し、それに基づいて行動を解釈し、予測する能力」ということです。端的に言いますと「人の気持ちを感じ取る力」ということです。
さて、この「人の気持ちを感じ取ることができない」と考えられる自閉症ですが、診断をするときにもう一つの要素が必要になります。それが「繰り返し行動とこだわり行動」です。つまり、「対人関係をうまく築くことができない」ということだけではなく、それにもう一つ、何らかの繰り返し行動やこだわり行動があって、初めて自閉症と診断されます。28日のセミナーでは、一見何の関係性があるのだろうと思われるこの二つの要素と自閉症の関係を説明する予定です。
それに関しては、当日のセミナーにまかせて、今回は、こだわりと繰り返しという観点から、元大リーガーのイチローさんについて、すこし述べさせていただきたいと思います。
大リーガーの野球選手だった当時のイチロー選手は、現役時代、試合前・試合中・試合後と毎日同じような運動や動作のルーティーンを繰り返していたことで有名です。その毎日の細かいルーティーンのこだわりと繰り返しから、渡米をした当初のころは、実際に周りから「イチローは自閉症ではないか?」と言われることがあったそうです。
もちろん彼は自閉症ではありません。なぜか。それは心の理論が発達しているからです。具体的には、イチロー選手がたくさんの人たちから慕われたことで分かるように、人間として人の気持ちを感じ取りながらコミュニケーションができ、状況に応じて適切に行動できるからです。
こだわりや繰り返しがあるから「その人は自閉症だ」ということが、いかに短絡的な見方なのかということが、このブログで、そして療育セミナーでお伝えしたい大きなテーマなのです。
今回は以上です。