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釧路療育セミナー事例研究(1)~冬でも短パン・Tシャツ、小さくなっても服や靴を着続け履き続ける(触覚過敏)

2021/10/27(水) 17:02 | izawa

 今回は、10月24日(日)に行いました「第1回 釧路療育セミナー」の後半での事例研究からご紹介します。

 事例研究で出された内容は3つです。そのうちの一つ目です。

【事例1】
 幼稚園の園児で、冬でも短パン・Tシャツを着ていたり、小さくなってピチピチになっている服を着続けたり、小さくなってはいても痛いと思われる靴を履き続けている子どもがいる。感覚が鈍感なのだろうか?

 

★実は今回特別参加をしていただいたお母さんの今高校生になるお嬢さ
 んが中2年の時に自閉所スペクトラムの診断を受けたそうです。そして
 小さいとき着替えのとき逃げ回ったり、買い物などに行くと手をつな
 ぐ前にいつもどこかへ行ってしまっていたり、そういえばあまり抱っ
 こをした記憶がないなどのお話をされました。伊澤としては、お嬢さ
 んは「触覚過敏」ではないかと考えられる旨、お話をしました。 

★「触覚過敏」とは、「感覚過敏」の一つです。

 「感覚過敏」とは
   ~人間のもつ感覚に対する外部からの刺激に対して、拒否的、感
    情的に反応する傾向をさします。感覚過敏は「感覚統合理論」
    という理論の中で説明されているのですが、感覚の中で特に触
    覚について、「触覚防衛」という言い方をしています。そして
    その中には過敏の他に、感覚が「鈍感」ということも含めてい
    ます。
    

★感覚過敏には、主となるものが3つ考えられます。
(1)触覚過敏
(2)聴覚過敏
(3)嗅覚過敏

★触覚過敏とは、具体的にどのようなものか?
①身体に触られるのを極端に嫌がる
 ・抱っこを嫌がる
 ・肩を抱かれるのを嫌がる
 ・鬼ごっこをして触られると痛がる
②手をつないだり、手を握られるのを嫌がる
③指先にのりをつけるのを嫌がる
④柔らかい粘土を触るのを嫌がる
⑤芝生や砂の上、ジュータンなどの上を歩くのを嫌がる。
⑥着替えをするのを嫌がり、逃げ回る。
⑦お風呂で体を洗ってもらったり、水しぶきを受けることを嫌がる。

★さて、伊澤の方から「触覚過敏」の話をさせていただいた後、今回の
 事例のお話が出ました。そして、それが過敏ではなく「鈍感」なので
 はないかと思われるが、「鈍感」ということはあるのか、という、幼
 稚園の先生のお尋ねでした。
 

★前述した「感覚統合理論」の「触角防衛」の中には、過敏の場合と鈍
 感の場合の両方が考えられていますから「鈍感」という場合も考えら
 れますと伊澤の方からお答えしました。

★すると、高校生のお嬢さんのお母さんが、実は自分の娘も小さいとき
 冬でも短パン・Tシャツでいたり、小さくなった服を着続けたり、小
 さくなった靴をずっと履き続けていた、というお話をされました。

★伊澤も、最初、出された事例の子どもさんは「鈍感」の方なのかなと
 考えましたが、お母さんの方から「過敏」と考えられる娘さんも同じ
 ことをしていたという話が出されて、今回の幼稚園のお子さんも「鈍
 感」ではなく「過敏」なのではないかと考えました。

★では、なぜ「過敏」の子どもさんが、冬に短パン・Tシャツでいた
 り、着れそうもないくらい小さくなった服を着続けたり、小さくなっ
 て履くと痛そうな靴を履き続けるのか?

★それで今回考えられた結論は「着心地が良かったのではないか」とい
 うことです。冬に短パン・Tシャツを着るというのは、服を着たとき
 の不快さが最小限だったからではないかと考えられます。更にいつ
 も、着心地が不快で気持ち的にも不安な状態が続くとき、たまたま
 「着心地がいい服」や「履き心地がいい靴」に出会い、本当に安心し
 て着たり履くことができたのかもしれません。だとしたら、小さくな
 ったとしても、不快な服を着たり、靴を履くよりもずっとそれでいた
 いと思ったのかもしれません。そのような内容を伊澤の方からみなさ
 んにお話ししました。

★もしそうだとしたら、このお子さんたちの体験は、壮絶な体験だった
 ことと思います。今回のような触覚過敏の子どもさんがいる場合、対
 応として、不快な状態を我慢して続けて慣れさせようとするのではな
 く、なるべく穏やかな刺激の受容をさせていきます。一番考えられる
 のは、綿100パーセントの衣服かと思います。もちろん、全てそれに
 するのは難しいかもしれませんが、できるだけ安心して着たり履いた
 りする衣服や靴を用意する配慮が必要と考えます。

★触覚過敏の状態は、いつ頃まで続くのでしょう?
 実は、15年以上続けている、療育教室 楽しい広場の発達相談の中の
 「言葉の遅れ」で来られた子どもさんのうち、大体2割~3割くらい
 は触覚過敏の子どもさんでした。親御さんがだいたい3才以降の幼児
 期の子どもさんの言葉の遅れを心配されて相談に来られ、お話をよく
 伺っていると、触覚過敏の特徴がたくさん出てきたのです。もちろん
 その時点で「触覚過敏」ということを親御さんたちはほとんどご存じ
 ありませんでした。そして、もう一つの特徴は、3才前後の頃から、
 過敏が穏やかになり、それと反比例するように言葉の発達が伸びてく
 る子どもさんが多かったということです。ですから、全てではないか
 もしれませんが多くの場合、過敏が消えることはないようですが、3
 才頃から生活に支障がない程度に過敏が穏やかになっていくのではな
 いかと考えます。

★最後に、現在、発達相談や早期療育機関の関係者の方々の中で「触覚
 過敏=自閉症」と考えられている方も多いかと思いますが、療育教室 
 楽しい広場では、もちろん「触覚過敏と自閉症は別物である」と考え
 ています。

 今回は以上です。