どうやったら、言葉が出るのか?
2021/10/12(火) 15:19 | izawa
人間の「言語能力」というのは、発語、言葉を使った会話、言葉を使ったコミュニケーション(例えば、語る、指示する、会議をするなど)など膨大かつ複雑なものです。
その中で、療育教室 楽しい広場の発達相談の中でとっても多いのが「言葉が出ない」「言葉がわずかしか出ない」というものです。つまり、2才、3才、4才になっても発語がない、あっても10個くらいのわずかしかない、という場合です。そして、親御さんとしては、「言葉を出したい」「言葉を増やしたい」と当然願います。
では、どうしたらそのような子どもさんたちに言葉が出てくるのか?
その答えを出すには、「では、一般的な発達として、子どもさんはどのように言葉が出てくるのか?」について、考え方を提示しなければなりません。
1 一般的な言語獲得理論
子どもさんたちが言葉を出す、更にはその先の言語能力を獲得するという時、いくつかの説があります。
一つは「環境説」。環境とは「大人の言葉」という意味で、大人の言葉や言葉がけなどの言語環境によって、子どもは言語能力を獲得していく、というものです。よく、以前「言葉のお風呂に入れよう」ということを聞きましたが、この環境説に近い立場の考え方でしょう。
二つ目は「生得性重視説」。これは、環境からの刺激(大人の言葉)だけから最終的に大人の文法が獲得されるのは不可能であり、あらゆる言語に普遍的な文法を子どもは生得的にもって生まれてくるはずだ、というチョムスキーという人の理論が代表的です。
三つ目は、「社会的相互作用を重視する」立場です。言葉の獲得に重要なのは、子どもの知的認知能力、そして、それに加えて「他者の意図を推測する能力」である社会的認知能力が重要である、とするものです。
2 「発達療育」における言語獲得の立場
我々が行っている「発達療育」においては、上記の中の三つ目の「社会的相互作用を重視する」立場です。
つまり、まず重要なのは認知的能力。これが言語発達の基礎になります。そして、もう一つ重要視しているのが人とかかわることから生まれる「伝えようとする力」です。その「伝えよう」とする経験の先に「発語」があり、言葉を使った会話、そして言葉を使ったコミュニケーションがあると考えます。
3 言葉が出ない原因
今回は、言語能力のうち、「言葉を出す(発語)」「発語を増やす」ということに焦点を絞ります。
療育教室 楽しい広場の発達相談やことば伸び伸び教室に、お子さんが「発語がない」「発語がわずかしかない」という不安で来られた場合、まつ、絵カードなどを使って認知能力を調べます。
認知能力に大きな発達の遅れはないと判断すれば、次に「社会的相互作用を重視する立場」から、幼児期の中心となる養育者と思われるお母さんとのこれまでの「かかわり」についてお聞きします。
すると、「発語がない」あるいは「発語が少ない」という子どもさんとお母さんとの「かかわりが極端に少ない」というケースがとても多いのです。「かかわりが少ない」ということは、おかあさんと要求、気持ち(心の状態)、感情、意思などを一方的にではなく、「お互いに伝え合う」場面が少ないということです。この「お母さんとのかかわりの極端な少なさ」が大きな原因と考えられるのです。
4 どうやって言葉を出すか
子どもさんとお母さんとのかかわりが極端に少ないことが、発語のなさ、少なさの原因と考えられ場合、お母さんに日常生活の中で子どもさんとのかかわりを、できるだけ増やしてもらうようお願いします。
具体的には、一日10分で良いので、一緒に遊ぶ時間を作ってもらいます。その時、一つ条件があります。積み木、お人形、ブロック、絵本、おもちゃなど、何でも構わないので「物」を使って遊んでもらいます。この物を使って遊ぶことによって、子どもさんとお母さんが一緒に「同じ物を見る」「同じ物を操作する」などによって、「共同性」が生まれ、「経験を共有する」ことができます。
この「共同性」によって、例えばアンパンマンやばい菌マン、ドキンちゃんなどの絵が描いてある積み木がいくつかあったとして、子どもさんはお母さんが一緒に遊ぶことによって、お母さんが喜んだり、時には怒ったりする感情や気持ちを客観的に感じることができるようになります。
そして、同じものを使って遊ぶ経験を共有していくことにより、その中で生まれる感情や気持ち、要求などを、子どもさんはお母さんに伝えられるようになります。お母さんはもちろん、それに応えてくれるでしょう。それが「かかわる」ということであり、「伝え合う」ということなのですね。
もちろん、「伝え合う」という経験の他に、大人の「言葉を聞く」ということ、そして言葉を出すための基礎になる「声を出す」ということ、そして舌、唇、ほお、あごなどの口腔機能の向上のために「食べる」ということも、発達的な経験として必要です。
これらの発達を基盤にして、「伝え合う」という経験が原動力となって発語につながっていくものと考えます。
今回は以上です。