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「視覚優位」は、発達の不安の重要なポイントです。

2021/10/09(土) 18:07 | izawa

 これまでも、療育教室 楽しい広場の「発達療育」では、「視覚優位の子どもさん」をたくさん取り上げ、そしてこれからもたくさん取り上げることになると思います。

 これまでも以前にこのブログで何度か取り上げましたが、ここでもう一度「視覚優位の子どもさん」についてまとめておきたいと思います。今後「視覚優位の子どもさん」について説明をする場合は、今回のブログを見ていただこうと思っています。

 

【視覚優位の子どもさんについて】

1 視覚優位と思われる子どもさんの特徴

 ・記憶力が抜群に良い
 ・一度見たものを細かいところまで覚えている
 ・絵本や図鑑を見るのが大好き
 ・テレビなどの画面で、小さい時からアニメの番組を見るのが大好き
 ・アニメのキャラクターや車の名前などを膨大な数覚えている
 ・2才~5才くらいで、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字を
  読むことができる 

 

2 視覚優位とはどういうことか?
 
視覚的な情報が、細かい所まで含めて、たくさん脳の中に記憶され、あふれているのではないかと考えられる。

 

3 幼児期の早期療育の中で、なぜ視覚優位を注目するのか?
 
これまで、15年間、療育教室 楽しい広場として、早期療育を行ってきましたが、その中で次のような発達に不安のある子どもさんがおりました。
 ・発語がない
 ・発語が少ない
 ・言葉の発達が遅い
 ・友だちと遊べない
 ・ボーっとしていることが多い
 ・宇宙語のようなものを話している
 ・突然違う話をし始める
 ・突然コマーシャルを言い出す
 ・話しかけてもこちらの言ったことを理解しているかどうか分からない
 ・集団行動の中で、一斉指示が通らない

 実は、これらのような子どもさんの中に、親御さんから話を伺っていくと「視覚優位の特徴」をもっている子どもさんがたくさんおられました。たくさんというのは、半数以上はもちろん、6割、7割くらいの割合です。相談やことばの指導を行う場合は、療育記録を毎回つけますので、その記録に「視覚優位」書かれた子どもさんがたくさんおられたということです。
 つまり、幼児期の子どもさんの発達の不安の原因として、この「視覚優位」がかかわっている可能性が多いということになります。

 

4 では、なぜ「視覚優位」になるのか?(原因)

 なぜ、視覚優位の特徴をもつ子どもさんが出現するのでしょう。早期発達相談や早期療育の関係者の中で、「視覚優位=自閉症」と考えられている方が多いという話は聞いたことがあります。

 療育教室 楽しい広場では、視覚優位と自閉症は無関係と位置づけています。では、「視覚優位」になる原因は何か?

(1)カウフマン理論
 1983年にアメリカのカウフマン夫妻が作った「K-ABC」という知能検査があります。日本では、1993年に日本版が標準化され、2013年には「K-ABC-Ⅱ」の日本版が刊行され、日本でも使われている知能検査の一つです。
 さて、この「K-ABC」という知能検査の理論モデルが「カウフマン理論」と呼ばれています。その中で、人間がもっている脳の認知処理機能の類型として、二つ挙げられています。それが「同時処理機能」と「継次処理機能」です。

(2)同時処理機能、継次処理機能の定義

 カウフマンモデルの中で、次のように定義されています。

(同時処理機能)
 ・複数の情報をまとめ、視覚的・運動的な手がかりを使って全体として
  とらえ、処理していく。
 ・視覚的な記憶力、全体を部分に分解する能力、空間認知能力などに結
  びついていると考えられる。
 ・日本版の「K-ABC」では、複数の視覚的な情報をまとめる力を示
  している。
(継次処理機能)
 ・連続した刺激を聴覚的・言語的な手がかりを使って、一つずつ順番に
  分析し、処理していく。
 ・短期記憶、情報の系列化の能力などに結びついていると考えられる。
 ・日本版の「K-ABC」では、複数の音声や動作を、聞こえたとおり
  見たとおりにの順番で、どの程度真似ることができるか等の力を示し
  ている。

 ここで、具体的な例で考えてみますと、例えば、「7058391」という7ケタの数字を覚えようとすると、「なな、ぜろ、ご・・・・」と口で唱えながら順番に覚えていくのが「継次処理機能」、一方、数字を見て写真を撮るように全体を一括して記憶するのが「同時処理機能」と考えられます。

(3)視覚優位とは「同時処理機能」が強いこと
 「K-ABC」の知能検査では、検査結果で「同時処理機能」と「継次処理機能」のどちらが強いかが分かります。
 通常、人間はこの二つの機能のうち、「継次処理機能」の方が強いと考えられています。しかし、中には「同時処理機能」の方が強い人がいます。そして、この「同時処理機能」の方が強い子どもさんが、前述した「視覚優位の特徴」をもった子どもさんと考えられます。つまり、「同時処理機能」が強いとしたら、「視覚優位の特徴」は十分考えられるということです。
 療育教室 楽しい広場では、「視覚優位」と考えれる子どもさんは、同時処理機能が強い子どもさんではないか、と考えています。

 

5 「視覚優位」と発達の不安の関係

 本来、視覚優位だからといって問題があるわけではありません。よく、映画監督で、場面ごとのスケッチを、あっという間に描いてしまう方がいらっしゃいますが、そういう方は、多分「視覚優位」の方と思われます。こどもさんでも、就学前に、ひらがなやカタカナ、数字、アルファベットをたくさん読めることは、なにも悪いことではありません。
 しかし、「視覚優位」の子どもさんの中で、もちろん全てではなく一部ですが、発達の不安をもつ子どもさんがおります。一番多いのが、発語の遅れ、言葉の発達の遅れです。
 なぜ、言葉が遅れるのか。
 その理由は、もちろん障害ではなく、同時処理機能が強い分、相対的に言葉の発達にとても重要な役割を果たす「継次処理機能」を使った情報処理の経験が少なかったのではないか、と考えます。
 「同時処理機能」でてっとり早く情報処理していくうちに、手間のかかる「継次処理機能」での情報処理が少なくなり、偏ってしまったのではないか。
 言葉というのは、物をただ見て「バナナ」というように言葉が出るわけではなく、お互いに意思や要求、感情などを「伝え合うこと」によって出てくると考えられます。「同時処理機能」が強く、偏ってしまった場合、言葉が出てくるために必要な「伝え合う」という経験が、「継次処理機能」を使う経験が少ないために少なくなってしまったのではないかと考えられます。

 ここでまとめます。
・視覚優位自体、悪いことではない。
・視覚優位の原因と考えられる「同時処理機能」が、相対的に「継次処理
 機能」より、情報処理の機能として強く偏ってしまった場合、発達の不
 安が生じる可能性があるのではないか。

以上です。

 今後、いろいろな発達の不安に関して考える際に、内容によっては、今回の「視覚優位」についての説明を利用していただけたらと考えております。