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「一斉指示が通らない」通らなければ、通るようにすればいい、ということです。

2021/06/27(日) 15:27 | izawa

 療育教室 楽しい広場のメール相談を含めての発達相談において、幼児期の子どもさんで、幼稚園や保育園で「一斉指示が通らない」と先生に言われて、不安を感じていらっしゃるお母さんが多くおられます。それぞれのクラスなどで、10人くらいから20人程度の集団での活動の時、先生が子どもさんたちに向かって、指示を出したとき、一人先生の指示が通らなくて、隣や周りのお友だちの様子を見たり、真似をしたりしてついていくことが多いということです。

 こういう年少さんから年長さんの子どもさんがいたとき、その子どもさんたちが「自閉症ではないか」と考えられている先生が多いということです。「一斉指示が通らない、ということは自閉症の疑い」というのは、療育教室 楽しい広場の「発達療育」から見たら、当然「自閉症の迷信」です。しかし、自閉症の医学的な診断基準が「行動だけを基準にしている」という特徴があるので、そういう迷信が生まれてくるのでしょう。

 「一斉指示が通らない」といわれているお子さんの場合、自閉症の疑いを持つ方々は「指示が通らないのは指示理解ができていない」と考えて、児童デイサービスや病院などの言語聴覚士さんと「指示理解」を強化する訓練、あるいは指導を勧められることが多いようです。

 しかし、「一斉指示が通らない」と言われている子どもさんたちは、ほとんどがおうちでの生活では特に問題はないし、友だちがいたり、友だちと遊んだりしています。また、一斉指示が通らない時でも、隣や近くのお友だちの様子を見て真似をして、遅くはなりますがついていきます。それから考えられることは、指示理解の基盤となる「言語理解」は、発達相応にできている、それから隣や近くにいる友だちのことを意識し、模倣をしているということです。

 「発達療育」では、今、このブログで掲載を続けている、1990年代にイギリスの認知心理学者のウタ・フリス氏が提唱した「自閉症には心の理論が欠けている」という、言語・認知障害説を基盤に考えています。そこから考えると、そういう子どもさんは、自閉症とは全然関係ない子どもさんです。つまり、「指示理解ができていない」ということが原因ではない、ということです。

 では、「一斉指示が通らない」障害以外の原因は何か。

 一つは、集団においての他の子どもさんたちを意識する範囲が、他の同年齢の子どもさんたちより、狭いのではないかということです。子どもは2才くらいまでは、自分のことを中心に考え、友だちという意識はありませんが、3才頃からごっこ遊びなどを通しながら、少しずつ集団で遊んだり活動することによって、他の友達を意識することがができてきます。

 そういう時、レーダーのように自分の周りの人を意識する範囲がだんだん大きくなってきます。幼児期の子どもさんで、他の子どもさんと比べておっとりしていたり、緊張しやすかったり、幼い感じがする子どもさんの場合、どうしてもまだ自分のことが中心になりやすいので、集団の中での意識がまだ狭いのではないか、と考えられます。つまり、先生のへの意識がまだ十分ではないかもしれない、ということです。

 もう一つは、集団の中で先生の指示が出たときに、自分のことで精いっぱいで先生の話を聞いているどころではない、という場合です。これは、一つ目の理由ともつながりますが、例えば、その時友だちにちょっかいを出していたり、あるいは先生の指示が出る前の行動がなかなかできなくて、それに気を取られて、先生の話を聞いていない場合です。

 要するに、指示理解ができないのではなく、いろいろな理由があるにせよ、自分のことで精いっぱいで、先生の話を聞いていなかった、ということです。ということは、普段の生活の中で、いろいろな集団の人とのかかわりの経験を積み重ねていけば、それらを学習して、集団の中での「一斉指示が通る」ようになるということです。これまで、かかわってきた子どもさんたちも、他の友だちより遅くはなりますが、「一斉指示が通る」ようになりました。

 いろいろな自閉症の迷信がありますが、もし、自閉症の疑いをかけられたり、親御さんご自身が不安になられたら、ぜひこのブログでもご紹介しています「自閉症ではない、と判断する2つのポイント」で確かめてください。

 一つは「良くも悪くも人を見て行動する」、そしてもう一つは「ごっこ遊びができる」です。このどちらかでも該当したら、発達の不安があっても自閉症とは考えられません。「自閉症ではない」と判断できたら、「じゃあ、この発達の不安の原因は何だろう」と前に進むことができます。「発達の不安=障害」ではありません。障害以外に、自閉症以外にたくさん原因が考えられます。それを落ち着いて、客観的に考えていきましょう。それが「発達療育」の考え方です。