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療育セミナー報告(10)~「良くも悪くも人を見て行動する」は自閉症ではない

2021/05/09(日) 12:32 | izawa

 今回が一連の療育セミナー報告の最終回です。

 テーマは、
 『「良くも悪くも人を見て行動する」子どもが、なぜ「自閉症ではな
  い」と判断できるのか?』

 「心の理論」から考えると、「自閉症ではないと判断する基準」は二つあります。
(1)良くも悪くも人を見て行動する
(2)ごっこ遊びができる
 この二つのうち一つでもできていると、認知心理学の「心の理論」の視点から見て、「自閉症ではない」と判断します。
 今回はこのうち、(1)「良くも悪くも人を見て行動する」について説明をいたします。

 

(1)良くも悪くも人を見て行動する

 認知心理学の立場のウタ・フリス氏の理論から見ると、自閉症の原因は「心の理論が欠けている」ということです。
 「心の理論」とは「人の心の状態を推測し、それに基づいて行動を解釈し、予測する能力」のことで、発達的には3才半以降にはっきりした形で伸長していきます。
 この「心の理論」によって発達していくのが、今までも何度も説明をしてきました「意図的コミュニケーション」です。言語的。非言語的シグナル(例えば、声、動作、しぐさ、視線など)を使い、相手の「意図(心の状態)」を推し量りながら、相互理解をしていくコミュニケーションです。
 この高度で繊細で複雑なコミュニケーションができていれば、認知心理学の「心の理論」の視点から見て、「自閉症ではない」と判断します。
 そして、この「意図的コミュニケーション」幼児期の子どもさんの場合に、はっきりした形で現れるのが「良くも悪くも人を見て行動する」ということです。

 例えば、年長さんくらいの年令の子どもさんが外から帰ってきて、すぐおもちゃで遊ぼうとすると、お母さんが「手を洗っておいで」と言ったとします。その言い方が子どもさんの方を見て、きつめの言い方だとしたら、子どもさんは「これはすぐにいかなきゃ怒られる」と考え、すぐ手を洗いに行くかもしれません。
 もし、お母さんの言い方が子どもさんを見ずに普通の言い方だったとしたら、「ラッキー、このまま遊んじゃおう」と考え、そのまま遊んでいたかもしれません。
 どちらにしても、このときの子どもさんはお母さんの言葉だけではなく、声の大きさ、声の調子、視線、表情、雰囲気、動作などの、お母さんに関するたくさんの情報を一瞬のうちに処理し、どう行動するかを判断します。
 これが、「良くも悪くも人を見て行動する」の一例です。つまり「心の理論」を使った「意図的コミュ二ケーション」なのです。自閉症児はこれが難しいのです。逆にこれができていれば「自閉症ではない」と判断できます。

 「この子どもさんは自閉症なのか、そうではないのか?」と議論することが目的ではありません。もし、認知心理学の「心の理論」の視点から見て、「自閉症ではない」と判断できれば、お父さん、お母さんが全面的にそれを受け入れてくださるかどうかは別として、どちらにしても、これから発達の不安を改善していく上で、少しでも心が軽くなるかも知れません。そして、療育を進めていく上では、発達の不安の原因を「障害以外」に絞りやすくなるのです。

 第19回 札幌療育セミナー報告は以上です。