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指導事例~2才2か月で発語が10個くらい

2021/01/17(日) 19:20 | izawa

 今回は、ことば伸び伸び教室のお子さんの指導事例を紹介いたします。

〈楽しい広場までの経緯〉

 初回の療育相談に来られたのが2才2か月の男のお子さんです。1才半健診で言葉の遅れを指摘され、1才11か月で、保健センターの心理士さんから病院を紹介され受診。発達検査を受け、自閉症の診断を受けました。お母さんが医師にその理由を聞いたところ、「執着が強い、人を頼らない」からだったそうです。その後、2才2か月のときに、楽しい広場の療育相談に来ていただき、その後、月1回のことば伸び伸び教室に来ていただきました。

 

〈お子さんの実態〉

 最初に来ていただいたときは、発語が「ママ、はい、モー」など10くらいでした。その他、通っていた保育園で、自分で気になるものがあると一人でそちらの方へ行ってしまう、ことがよくあったそうで、もちろん発語も少なかったようです。
 さて、指導をする前にお子さんの発達の状態を確認しました。指導者と向かい合っての一対一のやり取りは、途中飽きることもありましたが、だいたいできました。絵カードを選ぶという方法で、言葉の理解で認知的発達段階を確認したところ、5~6枚の絵カードから、名前を言ったものの絵カードを正しく取っていたので、1才半~2才程度の発達段階はあると確認しました。
 お母さんからお話を伺った中から浮かび上がってきたのが「視覚が強い」ということです。正確に申し上げますと、主に視覚的・運動的な手がかりを使って、いろいろな情報を全体的に一括して脳の中でとらえ、処理する機能が特に強い、ということです。これは、脳の「同時処理機能」と呼んでいます。

 

〈ことばの遅れの原因〉

 これまでも、繰り返しお話ししてきましたし、楽しい広場から出版しました電子書籍でも説明していますが、これまで楽しい広場に相談や指導で来られたお子さんで、「言葉が遅い」という発達の不安で来られたお子さんのだいたい半数以上はこの「視覚が強い」というお子さんです。特徴は抜群に記憶力が良い、一度見たものは細かい所でも覚えている、小さい時から虫や昆虫などの絵本や図鑑が大好き、アニメのキャラクターを100とか200くらい覚えている、などです。
 今回の男のお子さんも、お母さんにお聞きすると、1才くらいから絵本や図鑑をよく見ていて、背表紙で正確に絵本を持ってきたということでした。それで、多分「視覚が強い、つまり同時処理機能が強い」ことが影響して「ことばが遅れている」と原因を考えました。
 同時処理機能が強くなるとなぜ「ことばが遅れるのか?」
 考えられる理由は、お母さんとのかかわりが少なかった、あるいは弱かったのではないかということです。
 そう考えられる理由の一つは、好きな絵本や図鑑を見てひとりで遊ぶ時間が多かった、裏返せばお母さんとのかかわりの時間が少なかった、ということです。そして、もう一つの理由は、人間には同時処理機能と対をなす形で「継次処理機能」があると言われています。これは主に聴覚的・言語的な手がかりを使って、連続的な刺激を一つずつ順番に分析し、処理していく能力で、言葉を使ってのコミュニケーションにとって重要なものと考えられています。

 「視覚が強い、つまり同時処理機能が強い」お子さんは、どうしても視覚を使っての情報処理に偏ってしまい、その分、言葉を使ってのコミュニケーションに必要な「継次処理機能」が弱いのではないかと考えられます。幼児期のお子さんはお母さんとのかかわりがその中心になってきますが、「視覚が強い」お子さんの場合、お母さんが無意識のうちにも視覚に偏ったかかわり方になっていて、ことばを使ってのかかわりが少なかったのではないかということです。

 

〈改善の方法〉

 原因から考えて、今回、おうちにおいて、お母さんにお子さんとのかかわりを意識的に多くしてもらいました。かかわりを多くするというのは、具体的には、まず一日5分でも良いので、物を使って一緒に遊ぶということ。それから一日の日常生活の中で例えば、着替え、食事、トイレ、おふろなどお子さんとかかわる場面が必ずあります。そこで一言ずつで良いので、声をかけるということです。それによって、お子さんが何か応えてくれるかもしれません。
 基本的には、お子さんがお母さんに「伝えたい」と思えるような場面をできるだけたくさん作るということです。

 

〈改善の経過〉

 初回から3週間後に2回目で来ていただきました。そのときには、前回よりも発語の数が30以上は増え、保育園でも「いやだー」「おおきい」などと言うようになったそうで、お母さんがお子さんとコミュニケーションをすることが楽しくなってきたと言われるようになりました。
 その3週間後の3回目は、発語の数はもう数えきれないほどになり、「お茶ちょうだい」などの二語文が出てきて、更にお母さんと一緒にバス停にいるとき「今何が来たの?」「バス」と答える会話ができるようになりました。
 そして、更に3週間後の4回目が実は今日だったのですが、教室に来て椅子に座ってすぐ、木で作った手に持てるくらいの大きさの色のついたリングや、それをはめていく細長い棒を自分で指さして「赤、青、白、黄色」と言いました。楽しい広場の指導の中で、自分から言い出したのは初めてでした。今日は絵カードを見せていく中でも、何度も自分でしゃべっていました。これも今までになかったことでした。そして、お母さんにお聞きすると、保育園では、3か月くらい前まではほとんど発語がなかったのに、今はおしゃべりのベストスリーの中に入っているみたいですと教えてくださいました。それから、友だちの名前も出てくるとのことでしたので、友だちを意識でき始めていると思われるので、友だち同士のかかわりも増えてくると思われます。

 

〈まとめ〉

 とりあえず、今日の4回目で、指導は終了にいたしました。言葉の遅れの相談から病院で「自閉症」と診断されましたが、楽しい広場では「発語の遅れは、同時処理機能が強いという特徴がある子どもさんで、その影響でお母さんとのかかわりが少なかったり、弱かったりしたことが原因」と考えました、
 そして、改善方法として、ご家庭でお母さんとのかかわりを意識的に増やしていただくようにしたところ、言葉でのコミュニケーションや保育園でのかかわりなど大きく成長しました。
 これからの成長がとても楽しみです。