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「障害」以外の原因とは何だ?№11 言葉の遅れの原因~感覚過敏

2019/11/27(水) 14:13 | izawa

 

 これまでに療育教室 楽しい広場に「言葉の遅れ」の不安で来られたお子さんの中で、お母さんから聞き取りをして、感覚過敏であったお子さんも、前回のブログの同時処理機能と同様、たくさんおられました。だいたい3才から4才ぐらいにかけて、楽しい広場に来られるのですが、ほとんどのお母さんが、ご自分のお子さんが感覚過敏とは気がついておられませんでした。

 では、まず、感覚過敏について、簡単に説明をいたします。

 

★感覚過敏とは?
 
基本的に感覚過敏とは、人間のもつ感覚に対する外部からの刺激に対して拒否的、感情的に反応する傾向をさします。感覚過敏については、「感覚統合理論」では「触覚防衛」という言い方をしていますが、ここでは、同じ意味として考えます。今回は、代表的な2つの過敏について取り上げます。

1 触覚過敏
(1)身体に触られるのを極端に嫌がる。
  (例)・抱っこを嫌がる。
     ・肩を抱かれるのを嫌がる。
     ・鬼ごっこをして触られると痛がる。
(2)手をつないだり、手を握られるのを嫌がる。
(3)指先にのりをつけるのを嫌がる。
(4)柔らかい粘土を触るのを嫌がる。
(5)芝生や砂の上、ジュータンの上をはだしで歩くのを嫌がる。
(6)着替えをするのを嫌がり、逃げ回る。
(7)お風呂で誰かに身体を洗ってもらったり、水しぶきを受けるのを嫌
   がる。等々。

2 聴覚過敏
(1)普通は気にならない音、あるいは小さい音が気になる。
   → 例えば、赤ちゃんが寝ているとき、部屋のドアが開くような音
     ですぐ目が覚めて、夜泣きが多かったり、昼寝をなかなかしな
     い、など。
(2)ある特定の高さの音を嫌がる。
   → 例えば、赤ちゃんの泣き声、工事の音などを嫌がる。
(3)大きな音や突然の音を嫌がる。
   → 運動会の時のピストルの音や花火、クラッカー、ピアノの音、
     人が大勢で歌う音などを嫌がる。
(4)不規則な音を嫌がる。
   → クラシック音楽など比較的規則正しい音楽、あるいはメトロノ
     ームのような規則的な音が好きで、ロックのような音楽は極端
     に嫌がる。

 

★ 感覚過敏に対する対応
 基本的に、感覚過敏ということが分かれば、日常生活の中で、できるだけ刺激を落ち着いて受容できるよう、工夫することが必要と考えられます。
1 触覚過敏
(1)ぬいぐるみをなでる。
(2)暖かいものを手に持つ、あるいは着る。
(3)枕を膝に乗せて座る、あるいは枕を周囲において座る。
(4)毛布にくるまるなど、柔らかい、穏やかな感触の刺激を受容させ
   る。
(5)子どもの肩に手を置く。
(6)子どもの背中をリズミカルになでたり、軽くたたく。
(7)もし、子どもが受け入れられるようであれば抱きしめる。

 これらのように、身体的、そして精神的な、人の柔らかく暖かい感触の刺激を受容させることによって、日常生活の中で、落ち着いた刺激の受容を積み重ねていくことができると考えられます。

2 聴覚過敏
 聴覚過敏の場合は、子どもが嫌がる音を無理に慣れさせようとするのではなく、嫌がる音を避けて活動する配慮が必要です。幼児期では、例えば家庭では、落ち着いた音の環境の中で、お母さんや友だちと一緒に遊ぶ機会を増やし、安心感の中での楽しい活動を積み重ねることにより、聴覚過敏が落ち着いてくることが考えられます。また、家庭以外の幼稚園や保育園、児童デイサービスなどでも、できる限り、落ち着いた音の刺激の環境を整える配慮があることが望ましいと思われます。その際、他の子どもたちや親御さんたちに理解をしてもらう配慮も必要になると思われます。

感覚過敏はいつ頃落ち着くのか?
 これまで、療育教室 楽しい広場に来られた感覚過敏のお子さんたちは、そのほとんどが3才以上で、「言葉の遅れ」の不安で来られたのですが、その時のお子さんたちの感覚過敏は、ほとんどのお子さんについてはなくなってはいませんでしたが、生活に支障が出るような過敏はなく、落ち着いていました。
 つまり、そこから言えることは、3才頃までには多くの感覚過敏は、なくなりはしませんが落ち着くだろう、ということです。

感覚過敏のお子さんはなぜ「言葉が遅くなる」ことがあるのか?
 まず、ここで確認しておきたいのは、感覚過敏のお子さんが全て「言葉が遅くなる」ということではない、ということです。何らかの理由で、感覚過敏の一部のお子さんが「言葉が遅れる」と考えられるということです。
 では、遅くなる理由ですが、感覚過敏のお子さんは、その程度もありますが、感覚過敏の影響で、お母さんとかかわる時間がどうしても過敏ではないお子さんに比べて少なくなると思われます。そしてさらに、感覚過敏のお子さんは、いつ触られるか、あるいは、いつ嫌な音が聞こえてくるかと、常に不安感があると考えられます。かかわる時間が少なく、更にその時間の中でも不安感を抱えているとしたら、お母さんとのかかわりは弱いものになっている可能性があると考えられます。お子さんたちは、基本的にお母さんとのかかわりの中で言葉を発し、覚えていくのですから、当然、そこに「言葉の遅れ」が出ても不思議ではありません。

「言葉の遅れ」の改善の方法
 だいたい、3才を過ぎると感覚過敏が落ち着いてくると思われますので、まず、家庭ではお母さん、あるいは幼稚園・保育園・児童デイサービスの先生と、一対一でおもちゃなどの物を使ってどんどん遊びます。最初は短い時間でも、その時間を伸ばし、遊びの種類も増やしていきます。ここでは、大人との一対一での楽しいかかわりの中で、「相手を見て、人の話しを聞く」というコミュニケーションの基本が身に付き、大人との言葉でのやり取りの中でボキャブラリーを増やし、自分の会話もだんだん豊かになってきます。そして、そのやりとりを通して、相手の気持ちや考えを感じ取り、次に相手がどのような行動をするのかを予測する「心の理論」も発達していきます。「心の理論」は、コミュニケーションをとる上で、とても重要な発達です。
 そして、大人とのかかわりが増えてきたら、遊びの中で、最初は大人を介して、友だち数人と遊ぶ機会を増やしていきます。大人は合わせてくれますが、お互い相手に合わせる経験が少ない、ある意味真剣勝負の友だちとのかかわりの場面を少しずつ増やしていきます。感覚過敏のお子さんたちは、このかかわる経験が少ない上に、不安感を抱えながらのかかわりが多かったので、子の友だちとのかかわる場面では、最初は大人も配慮をしてあげた方が良いと思います。

(参考文献)
 ・「でこぼこした発達の子どもたち」(キャロル・ストック・クラノヴ
  ィッツ著/土田玲子監訳/高松綾子訳:すばる舎、2011年)