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「障害」以外の原因とは何だ? №10 言葉の遅れの原因~同時処理機能

2019/11/26(火) 13:58 | izawa

 自分のお子さんや周りにいるお子さんで次のような特徴のあるお子さんがいないでしょうか。

〇一度見た場所、物、道順などを細かいところまで正確に覚えていて、記
  憶力が抜群に良い。
〇アニメのキャラクターや車の名前など、膨大な数のものを正確に覚えて
 いる。
〇絵や恐竜・動物などの図鑑が大好き。
〇ひらがな、カタカナ、数字、アルファベット、漢字などに興味をもって
 いて、読める数も多い。ひょっとしたら天才ではないかと思われてい
 る。

 

 これまで療育教室 楽しい広場の個別療育相談やことば伸び伸び教室、そして電話やメール相談を延べで全部合わせると、だいたい2500件ぐらい行っています。実数で行くと600人くらいです。
 その中で「言葉の遅れ」が7割くらいはあったと思います。その中で、お母さんからお話を伺っていくと、上記のようなお子さんが本当にたくさんおられました。10人や20人ではありません。もちろんもっともっと多い数です。
 最初は、これらのお子さんたちは、どういうお子さんなのだろうと考えました。そこで思い当たったのが、1993年にアメリカで発売された「K-ABC」という知能検査の基礎理論(カウフマンモデル)に出てくる、脳の認知処理機能(新しい知識や技能を獲得していく機能)の一つである、同時処理機能です。定義は次のようなものです。

★同時処理機能
 ・複数の情報をまとめ、主に視覚的手がかりを使って、全体としてとら
  える。視覚的な記憶力、全体を部分に分解する能力、空間認知能力な
  どど結びついていると考えられる。

 実は、K-ABCの知能検査の基礎理論における脳の認知処理機には、対をなすもう一つの機能があります。それは継次処理機能です。定義は次のようなものです。

★継次処理機能
 ・連続した刺激を、主に聴覚的、言語的な手がかりを使って、一つずつ
  順番に、処理していく。短期記憶、情報の系列化の能力と結びついて
  いると考えられる。

 

 子どもは、だいたい3才前後くらいから言語的機能(表出、理解)が大きく伸びていきます。つまり、ここで言う「継次処理機能」がだんだん伸びてきて、認知的発達がバランスよく伸びていくことになります。

 今回のテーマにあるような特徴をもつお子さんたちの場合、その大きな共通点は、「視覚的な情報をたくさん脳の中に記憶しているのではないか」ということです。ということは、ここでいう「同時処理機能」が特に強いのではないか、ということです。ですから、視覚的な記憶力が抜群であったり、絵や図鑑、マーク、そして文字などに強い興味をもつのではないかと考えられます。K-ABCの知能検査(日本では2013年に日本版の改訂版が出されています)をして、同時処理尺度、継次処理尺度という形で、それぞれの強さの度合いが分かります。ここで一つ確認したいのは、同時処理機能が特に強いから障害である、ということではないということです。あくまでも、個人の認知処理機能のバランスを見るということです。

 さて、今回問題になるのは、今回のテーマにある特徴を持つお子さんが、同時処理機能が強いとして、「なぜ言葉が遅くなるのか?」ということです。
 この場合の「言葉が遅い」というのは、言葉を使った会話が年令相応の発達段階より遅れている、言ったことに対してうまく答えられない、友だち同士の会話についていけない、幼稚園などで先生が集団に言ったことを聞いてみんなと一緒に行動できない等を想定しています。

 言葉が遅れる原因について、楽しい広場では、今のところ、二つのことを考えています。

《原因》

(1)同時処理機能が強い子どもさんは、それに比べて連続した情報を順
   番に処理をしていく「継次処理機能」を使って「言葉を聞く」「言
   葉を話す」という経験が十分ではなかったのではないか。言葉を使
   った会話というコミュニケーションでは、順番に情報や言葉を処理
   して記憶していくということは、とても重要である。同時処理機能
   が強い場合、視覚的な情報がどんどん入ってくるので、そちらに頼
   りすぎて、情報や言葉を順番に処理し記憶し、それに対してまた言
   葉で発信していくという、言葉でのコミュニケーション能力が弱く
   なってしまったのではないか。これまでの楽しい広場での経験で興
   味深い事実があって、同時処理機能の強いお子さんの場合、絵や絵
   本は好きだが、絵本の読み聞かせはほとんどのお子さんが嫌がり、
   ページをめくってどんどん先に進みたがった。これは、ストーリー
   を言葉で順番に聞いていくことが苦手だったと考えられる

(2)絵や図鑑あるいはアニメなど、自分の好きな遊びしながら、一人で
   遊んでいたことが多かったのではないか。それが長いと、言葉を覚
   えて話していくために必要な、お母さんとのかかわりがだいぶ少な
   かったのではないか。

 

《改善の方法》
・お母さん、あるいは幼稚園・保育園・児童デイサービスの先生などと
 一対一でおもちゃなどの物を使って遊ぶようにします。1日10分でも
 15分でも良いです。それを続けることにより、「相手を見て、人の話
 を聞く」というコミュニケーションの基本が身に付き、言葉でのやり取
 りも当然増え、さらに、相手がどのように考えたり感じたりしているか
 を感じ取り、それを瞬時に分析して次の行動を予測すること(心の理
 論)が伸びてきて、コミュニケーションもよりスムーズになります。

・遊ぶとき、多分苦手であると思われる「順番に記憶する」遊び、絵本の
 読み聞かせ、手遊び、リトミックなどを多く取り入れるようにします。