ことば伸び伸び教室
療育教室 楽しい広場は、「教育としての早期教育」である「発達療育」を推し進めています。「発達療育」では、子どもさんの発達の不安の原因を教育的視点、つまり「生活経験を分析して原因を考える」という視点から考え、それに応じた適切な取り組みを行って、発達の不安を改善していくことを基本的な活動の目的としています。
語の数がわずかである。
・3才、4才、5才くらいで、宇宙語のような言葉を話したり、突然
違う話をし始めたり、自分の世界に入ることがあったり、同じ年代
の子どもさんに比べてコミュニケーションが不自然なところがあ
る。
うに感じられる。
Ⅲ 発達の不安の実態の把握
指導の基本として、子どもさんの生活経験を分析して原因を考えます。具体的には、次の4つの視点から分析します。
1 発達段階
*楽しい広場が作成した「子どもの発達概略表」を使います。
(1)認知 (2)言語 (3)情動・コミュニケーション
(4)身体の動き・運動 (5)目と手の機能・描く
2 身体的特徴の有無
(1)視覚優位
(2)感覚過敏(触覚過敏、聴覚過敏)
(3)気質(緊張性の強弱など)
3 お母さんとのかかわりの様子
4 生活環境(家族構成、生活リズムなど)
Ⅳ 「ことば伸び伸び教室」の基本的な指導の流れ
1 子どもさんの発達の不安の原因を考える
・親御さんに成育歴や現在の行動の様子を伺い、指導者が一緒に遊ん
だり学習をしたりしながら、子どもさんの生活経験を分析し、今回
指導をする発達の不安の原因を考える。
2 指導内容、方法の決定
・発達の実態把握を基に、具体的な指導内容、方法を決定する。
3 一対一の指導
・「人とかかわる力」を育てることを、重点内容とする。
・正確な発達の実態の把握を基に、個々の子どもさんの発達の実態に
応じた、適切な指導内容、方法で、指導を進める。
4 家庭での取り組み
・家庭でのかかわり方、働きかけの仕方について、適宜、アドバイス
を行う。
Ⅴ 指導事例ついて
「2才2か月で発語が10個くらいのお子さんのことばを伸ばす指導」
〈楽しい広場までの経緯〉
初回の療育相談に来られたのが2才2か月の男のお子さんです。1才半健診で言葉の遅れを指摘され、1才11か月で、保健センターの心理士さんから病院を紹介されて受診。発達検査を受け、自閉症の診断を受けました。お母さんがその理由を聞いたところ、「執着が強い、人を頼らない」からだったそうです。楽しい広場の指導者の伊澤としては、「そんなことで自閉症の診断を出すのか?」と驚きました。
さて、その後2才2か月の時に療育教室 楽しい広場の療育相談に来ていただき、その後、月1回のことば伸び伸び教室に来ていただきました。
〈お子さんの実態〉
最初に来ていただいたときは、発語が「ママ、はい、モー」などの10個くらいでした。その他、通っていた保育園で、自分で気になるものがあるとひとりでそちらの方に行ってしまうことがよくあったそうで、もちろん発語も少なかったそうです。
さて、指導をする前にお子さんの発達の状態を確認しました。指導者と向かい合っての一対一のやり取りは、途中飽きることもありましたが、だいたいできました。絵カードを選ぶという方法で、言葉の理解で認知的発達段階を確認したところ、5~6枚の絵カードの中から、名前を言ったものの絵カードを正しく取っていたので、1才半~2才程度の発達段階はあると確認しました。
お母さんからお話を伺った中から浮かび上がってきたのが「視覚が強い」ということです。正確に申し上げますと、主に視覚的・運動的な手がかりを使って、いろいろな情報を全体的に一括的に脳の中でとらえ、処理をする機能が特に強い、と言うことです。これは、脳の「同時処理機能」と呼んでいます。
〈ことばの遅れの原因〉
これまでも繰り返しお話をしてきましたし、楽しい広場から出版しました電子書籍でも説明をしていますが、これまで楽しい広場に相談や指導で来られたお子さんで、「ことばが遅い」という発達の不安で来られたお子さんのうち、だいたい半数以上はこの「視覚が強い」というお子さんたちでした。特徴は、抜群に記憶力が良い、一度見たものは細かい所でも覚えている、小さいときから昆虫や恐竜などの絵本や図鑑が大好き、アニメのキャラクターを100とか200くらい覚えている、などです。
今回の男のお子さんも、お母さんにお聞きすると、1才くらいから絵本や図鑑をよく見ていて、背表紙で正確に絵本を持ってきたということでした。それで、多分「視覚が強い、つまり同時処理機能が強い」ことが影響して「ことばが遅れている」と原因を考えました。
同時処理機能が強くなるとなぜ「ことばが遅れるか?」
考えられる理由は、お母さんとかかわる時間が少なかった、あるいは弱かったのではないか、ということです。
そう考えられる理由の一つは、好きな絵本や図鑑、アニメなどを見たり、大好きなミニチュアカーなどでひとりで遊ぶ時間が多かったのではないか、裏を返せば、お母さんとかかわる時間が少なかったということです。
そして、もう一つの理由は、人間には同時処理機能と対をなす「継次処理機能」があると言われています。これは主に聴覚的・言語的手がかりを使って、連続的な刺激を一つずつ順番に分析し処理していく能力で、ことばを使ってのコミュニケーションにとって、とても重要なものと考えられています。「視覚が強い、つまり同時処理機能が強い」お子さんは、どうしても視覚を使っての情報処理に偏ってしまい、その分、言葉を使ってのコミュニケーションに必要な「継次処理機能」が弱いのではないかと考えられます。「視覚が強い」お子さんの場合、お母さんが無意識のうちにも視覚に偏ったかかわり方になっていて、言葉を使ってのかかわりが少なかったのではないか、ということです。
〈改善の方法〉
原因から考えて、今回おうちにおいて、お母さんにお子さんとのかかわりを意識的に多くしてもらいました。かかわりを多くするということは、具体的には、まず一日5分でも良いので物を使って一緒に遊ぶこと、それから、一日の日常生活の中で例えば着替え、トイレ、食事、お風呂などおこさんとかかわり場面が必ずあります。そこで、一言で良いので声をかけるということです。それによって、お子さんが何か応えてくれるかもしれません。
基本的には、お子さんがお母さんに「伝えたい」と思えるような場面をできるだけたくさん作るということです。
〈改善の経過〉
初回から3週間後に2回目に来ていただきました。そのときには、前回よりも発語が30個以上は増え、保育園でも「いやだー」「大きい」などと言うようになったそうで、お母さんがお子さんとコミュニケーションをすることが楽しくなってきたと言われるようになりました。
その3週間後の3回目は、発語の数はもう数えきれないほどになり、「お茶ちょうだい」などの二語文が出てきて、更にはお母さんと一緒にバス停にいるときお母さんが「今何来たの?」と聞くと、「バス」と答える会話ができるようになりました。
そして、更に3週間後の4回目では、教室に来て椅子に座ってすぐ木製の色のついた教材のリングを見て、「赤、青、白、黄色」と自分で指さして言いました。楽しい広場の指導の中で、自分から言い出したのは初めてでした。その後、絵カード見せていく中でも、何度も名前を言ったりしてしゃべっていました。これも、今までにはなかったことでした。保育園では、3か月前まではほとんど発語がなかったのに、今ではおしゃべりのベストスリーに入っているみたいですと教えてくださいました。それから、友だちの名前も出てくるとのことでしたので、友だちを意識でき始めていると思われますので、これから友だち同士のかかわりも増えてくると思います。
言葉の指導は、この4回目で一応終了といたしました。これだけ、言葉を使ったコミュニケーションが活発になり、友だちを意識し始めたなら、当初、病院の医師がつけた「自閉症」の診断も吹き飛んでしまいました。子どもさんの成長がそれを証明したことになるのです。
Ⅵ 指導について
★利用の日時
月ごと、療育教室の開催日時と会場をこのホームページとブログでお知らせいたします。
【令和5年9月・10月の予定と予約状況】
9月にいつきましては終了いたしました。
10月につきましては下記の通り開催いたします。
【10月】
〇 8日(日)
9:30~10:30 予約済
10:45~11:45 予約済
12:00~13:00 予約済
13:15~14:15
14:30~15:30
〇 日( )
9:30~10:30
10:45~11:45
12:00~13:00
13:15~14:15
14:30~15:30
(会場)札幌市社会福祉総合センター 第1会議室
★料 金
1回1時間、3000円、
★申し込み
予約制。電話又はメールでお申し込みください。
(担当:伊澤)
電話 011-896-3204
メールアドレス tanoshi.ryouiku@gmail.com
*なお、「楽しい広場のブログ」で、具体的な指導方法、指導理論、実際の指導事例などを掲載しておりますので、ご覧ください。