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適切な療育の方法、Ⅱ知的な発達の遅れに対する療育の基本(3)

2007/10/08(月) 18:33 | izawa

 今回は、知的な発達の各要素ごとに、その基本となる事柄を書き記しま

す。

1 認知面の発達

 子どもの日常生活の中での活動を考えるとき、基本的には認知的な発

達段階、言い換えると認知的な発達年令に応じた活動・遊びを行う。例え

ば、生活年令が5才で認知的な発達年令が2才ぐらいだとすれば、2才の

子どもが行うような活動・遊びを行う。その経験を積み重ねることにより、

発達を促していく。

2 言葉

 子どもは本来、日常生活の言葉が行き交う中で生活することにより、自

然と言葉を聞き、覚え、しゃべるようになっていく。しかし、知的な発達に

遅れがある場合は、それだけでは不十分である。

 認知的な発達段階が1才6ヶ月くらいになると、子どもはものの名前に

興味を持ち、急激に名前を覚え出す。そこで、そのような段階になったと

き、一日の中で少しの時間(5分~20分程度)、場面を設定し、絵カード

・絵本・テレビ・CDなどを一緒に見聞きしながら、療育者がものの名前

を言い、話をしていく。そうする中で、絵カードや絵、絵本などを使いなが

ら「アンパンマンはどれ?」「バナナはどこ?」と聞きながら選ばせていく。

そうして言葉を覚えながら、喃語の段階から言葉らしきものが出てくるよう

になったら、絵カードを見せながら一緒に発音をさせていく。基本的には、

日常生活の中と、一日の中での少しの時間の療育者との言葉を覚える

時間(5~20分程度)での、意図的な働きかけを行いながら、言葉の発達

を促していく。その過程は、具体的な認知的な発達段階の把握のところで

述べてあるが、基本的なところは次のとおりである。

 〈1才6ヶ月〉~ ものの名前を急激に覚えだす。発音では「おおむ返し

(反響言語)」の出現。

 〈2才0ヶ月〉~ よくしゃべる。構音が正確になり、他人に通じる程度に

なる。1~2の指示に従うことができる。

 〈2才6ヶ月〉~ ものの「分類(種類、用途)」ができるようになる。

 〈3才0ヶ月〉~ 一般的なものの名前がほとんど言える。基本的な動詞、

形容詞が分かる。言葉をコミュニケーションの手段として使うことができる。

「言葉の世界」に入っていく。

3 コミュニケーション(人とのかかわり)

 基本的には、乳児から幼児期にかけて、親御さんや他の療育者との一

対一の相互的な応答ができているかが重要になる。知的な発達に遅れが

ある場合、

(1)人への意識が弱い。

(2)外からの刺激に対しての反応が弱い。

ということが考えられるので、子どもの認知的な発達段階を正確に把握

した上で、その発達段階に応じたかかわり方をする必要がある。基本的

には、子どもに言葉がけなどをした場合、それに対する、声なり、動作なり

、言葉なりの小さなことでも良いので、「反応を療育者に返す」ということに

留意していくことが重要と考えられる。

4 自律性の発達

 自律性の発達が不十分である可能性が高いとしたら、その子どもの自

律性の発達のために、意図的な働きかけをする必要がある。それにはま

ず、家庭や幼稚園、保育園などの療育現場での親や療育者、及び子ども

同士の実際のやりとりの中で、場面や状況に応じ、自己主張・自己実現

(自分の意志をもつ、自分の考えを主張する)と、自己抑制(我慢する、

人に譲るなど)を選択し、行う場面を意図的に設定して繰り返し経験させ、

親や療育者がときには援助しながら、子どもが自分で自分をコントロール

しながら行動する場面を増やしていくことが重要であると考えられる。そし

て、もう一つ重要なことは、家庭と療育現場が協力して同じ働きかけを家

庭でも療育現場でも行う、ということである。自分をコントロールするという

ことは、子どもにとってたやすいことではない。家庭の親御さんと幼稚園・

保育園などの療育現場が、同じような明確な意図をもつことによって、

子どもの自律性が育つのである。

5 経験のさせ方

(1)知的な発達に遅れをもつ子どもの場合、健常と言われる子どもより

発達していく速度が遅い。健常の子どもが2回でできることを9回も10回

も繰り返してようやくできる。あるいは、それでもできないかもしれない。

ゆえに、知的な発達に遅れをもつ子どもを療育していく場合、親、あるい

は療育者は、健常の子どもたちよりも何倍も意図的な働きかけを行う必

要がある。しかし、知的な発達に遅れをもつ子どもでも、意図的な働きか

けをしながら、子どものもつ「自分で伸びていく力」を引き出すことにより、

子どもの発達に加速がつくことも忘れてはならない。

(2)幼稚園・保育園のような健常の子どもが一緒に生活している場合、知

的な発達年令に応じた内容の活動を健常の子どもたちとは別個に行った

り、あるいは生活年令の下の子どもたちと行うことが考えられるが、その

ほかに散歩、外遊び、昼食、おやつなどは生活年令の同じ子どもたちと

一緒に活動する機会を多くする。それは、生活年令が学校、社会での生

活の基準になるからである。しかし、ここで考えなくてはならないのは、発

達の実態があまりにも同じ生活年令の子どもたちと違っている場合は、

一緒に活動することがかえってマイナスになるので、行わない場合もある

と、いうことである。