医学的診断を基にした早期療育の限界~成育歴を無視している
2023/05/15(月) 15:07 | izawa
今の日本の多くの早期療育は、医師による医学的診断を基にした早期療育と言えます。精神発達遅滞、自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの医学的な診断の影響力が、早期療育の中でとても強いということです。
さて、療育教室 楽しい広場の発達相談の中で一番多いのがダントツに「言葉の遅れ」です。2才代、3才代、4才代で発語がわずかしかない、あるいは発語はあってもなかなか二語文、三語文が出てこない、友だちと会話ができないなど、年代に応じたいろいろな不安があります。
そういう幼児期の子どもさんの「言葉の遅れ」の不安がある場合、病院や保健センターなどの発達相談では、その多くは知能検査や発達検査を行い、その結果を見て自閉症などの発達障害や知的障害の診断、あるいはその疑いなどの見解を出します。そしてそこから早期療育がスタートします。
さて、これまでたくさんの相談でお母さんやお父さんにお話を伺うとほとんどの親御さんが、そういう医師に受診した際や保健センターなどでの発達相談での中で、知能検査や発達検査をしたり、その場で心理士や看護師が一緒に遊ぶところを観察したりはしますが、それまでの成育歴、つまりこれまでどのように育ってきたか、どのように生活経験をしてきたか、その中で大きな特徴はないかなど聞かれたことはない、ということでした。
実は、この「成育歴を聞かない」つまり「成育歴から言葉の遅れの原因を考えない」というのが、今の日本の早期療育の弱点であると言えます。
子どもさんに言葉の遅れがある場合、「知的障害や自閉症などの発達障害が原因ではないか?」と考えることは問題があるわけではありません。しかし、今の日本の早期療育はこの「障害が原因」からしか考えません。他に原因を考えません。ここで大事なことを置き去りにしています。
子どもが育つということは、家庭や幼稚園、保育園、こども園、児童デイサービスなどのいろいろな場所・場面での「生活経験」を通して、いろいろな発達が伸び、成長していくということです。様々な生活環境や身体的特徴がある中で、それぞれの子どもさんたちは生活を経験し、成長していきます。そして、その中で発達が遅れたり、偏ったり、問題行動が起きたり、発達の不安が生じることがあります。
当然親御さん、そしてそれぞれの教育機関の先生方は、その原因を考えます。知的障害や自閉症ではないかと考える方もいるでしょう。しかし、考えられる原因はそれだけではないはずです。それぞれの子どもさんがそれぞれの生活環境で生活経験をする中で、何か問題があるのではないか、と考えることも当然必要です。必要にもかかわらず、今の日本の早期療育ではこれが欠落しているのです。
それが欠落していると何に影響を及ぼすかというと、例えば「言葉の遅れ」を改善するための方法を提示することができない、ということになります。「言葉の遅れは障害が原因である」と考えたとき、「言葉は障害があるからこれから大きく発達することはない。であれば他のジェスチャーや絵カードを使ったコミュニケーションを伸ばしていこう」と考えます。もし、そういう療育を行えば、言葉伸びません。
長くなりましたので、今回はここで終わります。続編は成育歴の重要性を具体的に明らかにしていきたいと思います。