
平成20年1月20日(日)、9時30分~12時00分の時間帯、札幌市社会福祉総合センターで楽しい広場主催、第3回療育セミナーを開催いたしました。当日は、幼稚園教諭・保育士・子ども塾講師、親御さんなど13名が参加されました。内容は、楽しい広場代表の伊澤が、「子どもの障害は3才の発達で判断する(その1)~言葉と認知的な発達の把握」のテーマで講演をいたしました。今回、その報告をいたしたいと思います。今回の報告は、講演の要旨の順に沿って進めさせていただきます。
1 伊澤(講演者)のプロフィール
2 療育教室 楽しい広場の役割
(1)発達に不安のある子どもさんの知的な発達段階・実態を把握し、親御さんに説明する。
(2)発達に不安のある子どもさんの知的な発達段階・実態に応じた、適切な働きかけ、つまり療育を行う。
(3)療育を行う上で、次の2点を重要課題と位置づける。
①「コミュニケーションする態勢」と「学習する姿勢」を身につける。
*「コミュニケーションする態勢」(0才~3才)
→ 相手をよく見、話を聞き、相手からの言葉・表情・動作・しぐさ・雰囲気などをとおしての働きかけを受け止め、反応し、そして、同じく言葉・動作・しぐさ・雰囲気などをとおして、その反応を相手に伝えること。
*「学習する姿勢」(3才~6才)
→ 一対一で相手を見、注目し、話を聞き、主に言葉を中心とした働きかけに反応し、その反応を主に言葉で相手に伝えること。
②人間として成長する上で重要な「言葉で考える」 「言葉でコミュニケーションする」「自律性(自分で自分をコントロールして行動する)を伸ばす」「社会性を身につける」等の内容を重点的に、療育を進める。
3 療育を進めていく上での基本的な考え方
一般的に、子どもの発達には過程があり、流れがある。そして、知的な発達にも同様に発達の過程、流れがある。
→ その一般的な子どもの発達の過程を基準にして、個々の子どもさんの知的な発達段階・実態を把握した上で、その子どもさんの知的な発達を促す、言い換えると「人間の内面の発達を促す」療育を行っていく。
4 知的な発達とは何か。
(1)乳幼児の発達とは?
(2)発達の要素と構成
(3)知的な発達の4つの要素
①認知 ②言葉 ③人とのかかわり・コミュニケーション ④自律性
*資料:「子どもの発達の概略表」を基に説明。
5 認知的な発達の把握の方法
(1)ピアジェの認知発達論の特徴
(2)マクドナルドとチャンスの理論を基にした具体的な認知発達段階と、絵カードを使った把握の方法(絵カードによる実演)
(弁別の段階)・・・・・ものの違いが分かる。(1:06~3:00)
・マッチング
・ポインティング
・分類(種類や用途などによって分ける)
・命名(ものの名前を言う)
(知覚の段階)・・・・・ものごとの意味が分かる。「言葉の世界」になる。
・動詞、形容詞が分かる。
6 言葉の発達の把握
3才と4才の言葉の発達の特徴
7 人とのかかわり・コミュニケーションの把握
(1)人への意識
(2)認知的な枠組みの獲得 → 「コミュニケーションをする態勢」の確立
8 自律性の確立
3才~4才にかけての自律性の急速な伸長
9 子どもの障害の有無の確認
(1)療育相談の過程で、発達に不安のある子どもさんは、その発達の実態からだいたい次の3つに分けられる。
①正常な発達の範囲で、一部発達の遅れがある。
②知的な障害をもち、知的な発達の遅れがある。
③発達障害がある。(自閉症、アスペルガー症候群など)
(2)子どもの障害の有無を判断する場合は、基本的にその子が3才になったときに、3才の一般的な発達を基準にして判断すべきである。
10 療育の前提
(1)発達段階を正確に把握し、それに応じた適切な働きかけの必要性。
(2)「コミュニケーションする態勢」「学習する姿勢」の確立。
11 幼児期に療育の中で具体的に何を学んでいくのか、伸ばしていくのか。
(1) 「コミュニケーションをする態勢」の確立(遊びなどをとおして:0才~3才)
・相手(親しい大人;以下同じ)を見る。
・一緒に遊ぶ相手を注目する。」(集中して見続ける)
・おもちゃなどを持ってきて相手に見せ、一緒に遊ぼうとする。
・簡単な指示を理解して行動する。
→ 「○○ちゃん、こっちへおいで」「これ をお母さんにハイって持っていって」「そこへ行っちゃだめだよ」等
(2) 「学習する姿勢」の確立(一対一の学習場面をとおして:3才~6才)
・席に座って相手(親しい大人、指導者など:以下同じ)を注目する。
・席に座って相手の話を聞く。
・席に座って相手の質問に動作で答える。
・席に座って相手の質問に言葉で答える。
・席に座って相手と言葉で会話(やりとり)をする。
(3) 言葉の理解と発語(絵カードや絵本を使って)
・日常生活で身近なものの名前を覚える。
・日常生活で身近なものの名前を言う。
・日常生活で身近なものを分類する。
・日常生活の中で使う動詞を覚える、言う。
・日常生活の中で使う形容詞を覚える、言う。
(4)かく
・絵の上からなぐり描きをする。
・塗り絵をする。
・○・△・□・×などの簡単な形を描く。
・顔を描く。
・人の体を描く。
・数字を書く。
・ひらがなを書く。
(5)形、数字と数量
・積み木やパズルでいろいろな形を作る。
・○・△・□・×などの簡単な形を理解する。
・赤・青・黄色などの基本的な色を理解する。
・大小・長短・多少を理解する。
・数唱をする。
・数字を覚える。
・数字の順序を覚える。
・一対一対応(鉛筆1本もリンゴ1個も同じ「1」である。)を理解する。
・数字と数量を合わせる。(1と1個、3と3本など)
・数(量・数字)の多い・少ないの理解。
(6)模倣
・手遊びをする。
・簡単な子ども体操をする。
・リトミックやリズム遊びをする。
12 療育機関の多様化
↓
なぜ、親御さんたちは、発達に不安のある子ども、障害をもつ子どもを、幼稚園・保育園・子ども塾・音楽教室・絵画教室などに入れるのか。
(1)幼稚園・保育園
・他の健常と言われる子どもたちと一緒に保育し、生活を送ることで、他の子どもたちと刺激しあいながら、発達し、成長していくことを期待しているのではないか。
(2)子ども塾
・指導者との一対一での学習をとおして、言葉の発達や言葉でのコミュニケーションの仕方、落ち着いた学習態度を身につける、などを期待しているのではないか。
(3)音楽教室・絵画教室など
・少人数での学習により、自分でいろいろなことを表現すること、人とかかわっていくことを学び、身につけてほしい、と期待しているのではないか。
*次回は、2月24日(日)、9時30分~12時00分、場所は今回と同じく、札幌市社会福祉総合センターを予定しております。近くになりましたら、ご案内いたします。
