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2021/10/29(金) 14:29 | izawa

 今回は10月24日(日)に行われました「第1回 釧路療育セミナー」の後半の事例研究のご紹介の2回目です。今回は2つご紹介したします。

【事例2】
 年中さんの男子の園児で、みんなで例えば絵を描いたりしているときは何でもないのですが、近くに人がいなく、自分一人で何か例えばパズルでもしているとき、後ろに先生がいるときは何ともないのですが、友だちが見ているととても嫌がり、この前はとうとう友だちを蹴飛ばしてしまったとのことでした。何が原因なのでしょう?

★幼稚園の先生は、なぜこんなことでほかのお友だちを蹴飛ばすのだろ
 う?、と思われたのではないかと思います。今回の問題は、自分のい
 らいらする感情を抑えられなかったこと、そして他のお友だちを蹴飛
 ばす、つまり「他害」というものがあるということです。これは、今
 のうちになくしていかなければなりません。これまでの経験から、こ
 のままこれからお兄さんなったら自然と蹴飛ばすことがなくなるとい
 うことはありません。ずっと続いていくことになります。

★今回の大きな問題点は「感情を抑えられなかった」ということです。
 子どもは、3才・4才くらいから「自律性」が伸長していきます。自律
 性とは、「自分で自分の行動をコントロールすること」です。つまり
 は、「自分の感情をコントロールする」ということです。それを言い
 換えますと「自己主張・自己実現と自己抑制のバランスが取れる」と
 いうことです。

★3才・4才ころになると、この事の意味や善悪が分かるようになり、更
 には周りの状況や様子を見ながら、それらに適応して行動ができるよ
 うになってきます。ですから、「自律性」が発達してくるのです。今
 回の子どもさんの場合、この自律性が伸びていないのではないかと考
 えられました。幼稚園の先生に、このお子さんのおうちの様子を伺っ
 たところ、一人っ子でとてもご両親に大事に育てられているようだ、
 というお話がありました。

★さて、お子さんを大事に育てるといことは悪いことではありませんが
 陥りやすい欠点があります。それは、大事に育てるあまり「ちょっと
 待つ」や「ちょっと我慢する」、「後片付けをする」など「自分を抑
 える」経験を子どもさんにさせていない場合があります。それが3才・
 4才くらいまで続くと、本来伸びるべき自律性、つまり「自己主張・自
 己実現と自己抑制のバランスをとる」ところの「自己抑制」の経験が
 極端に少なくなれば、バランスの取りようがなくなります。

★自律性が伸びずに幼稚園や保育園に入ると、「かんしゃくが激しLく
 なる」「友だちとトラブルが多くなる」「自分の思う通りにいかない
 時友だちをたたいたり足で蹴飛ばしたりする」ということが出てくる
 可能性が高くなります。

★もし、今回の場合、おうちでの状況が、こちらの予想通りであるとし
 たら、早急に対応しなければなりません。こういう場合は、幼稚園の
 先生から、お母さんに、お話をしていただき、おうちで「自分を抑え
 る経験」、例えば「ちょっと待つ」「ちょっと我慢する」「遊んだ後
 の後片付けをする」「自分でできることは自分でする」などの経験を
 これから意識的させていくことが大事であることを理解していただく
 ことがとても大事です。もちろん幼稚園でも同じようにすることも必
 要です。このような、お話を伊澤の方からさせていただきました。

 

【事例3】
 年中の園児で、片方の耳が軽い難聴で、友だちとかかわるときちょっとずれたり、違和感があったりして、行動を見ていると「自閉症なのかな」と思って見たりすることがあるが、どう考えればよいのでしょう、ということでした。

★先生にお聞きすると、軽い難聴の方の耳が中耳炎であるとのことで、
 そういう場合は、よく聞き取れないことも多くなるので言葉も遅れて
 くることが多くなります。今までも、楽しい広場の相談の中でも、言
 葉の遅れの原因が中耳炎であったという例は何人かおられました。中
 耳炎が治ることにより、言葉がどんどん出だしたという子どもさんも
 おられました。

★もし、中耳炎などが原因で耳が良く聞こえていないとしたら、人との
 かかわり、コミュニケーションで遅れが出たり、不自然だったりする
 ことが出てくることは十分考えられます。そして、行動だけ見ると   
 「自閉症ではないか」と考えられる人もおられるでしょう。しかし、
 今回のように「軽い難聴」という自閉症以外の原因がはっきりしてい
 るのであれば、「自閉症」という言葉は、横にどけておいて、耳の状
 態を医療で改善することとともに、少し聞きづらいという子どもさん
 の状態を把握した上で、言葉の指導や友だちとのかかわりの経験をさ
 せていくことが大切であると思われる、というお話を伊澤の方からさ
 せていただきました。

 今回は以上です。

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/10/27(水) 17:02 | izawa

 今回は、10月24日(日)に行いました「第1回 釧路療育セミナー」の後半での事例研究からご紹介します。

 事例研究で出された内容は3つです。そのうちの一つ目です。

【事例1】
 幼稚園の園児で、冬でも短パン・Tシャツを着ていたり、小さくなってピチピチになっている服を着続けたり、小さくなってはいても痛いと思われる靴を履き続けている子どもがいる。感覚が鈍感なのだろうか?

 

★実は今回特別参加をしていただいたお母さんの今高校生になるお嬢さ
 んが中2年の時に自閉所スペクトラムの診断を受けたそうです。そして
 小さいとき着替えのとき逃げ回ったり、買い物などに行くと手をつな
 ぐ前にいつもどこかへ行ってしまっていたり、そういえばあまり抱っ
 こをした記憶がないなどのお話をされました。伊澤としては、お嬢さ
 んは「触覚過敏」ではないかと考えられる旨、お話をしました。 

★「触覚過敏」とは、「感覚過敏」の一つです。

 「感覚過敏」とは
   ~人間のもつ感覚に対する外部からの刺激に対して、拒否的、感
    情的に反応する傾向をさします。感覚過敏は「感覚統合理論」
    という理論の中で説明されているのですが、感覚の中で特に触
    覚について、「触覚防衛」という言い方をしています。そして
    その中には過敏の他に、感覚が「鈍感」ということも含めてい
    ます。
    

★感覚過敏には、主となるものが3つ考えられます。
(1)触覚過敏
(2)聴覚過敏
(3)嗅覚過敏

★触覚過敏とは、具体的にどのようなものか?
①身体に触られるのを極端に嫌がる
 ・抱っこを嫌がる
 ・肩を抱かれるのを嫌がる
 ・鬼ごっこをして触られると痛がる
②手をつないだり、手を握られるのを嫌がる
③指先にのりをつけるのを嫌がる
④柔らかい粘土を触るのを嫌がる
⑤芝生や砂の上、ジュータンなどの上を歩くのを嫌がる。
⑥着替えをするのを嫌がり、逃げ回る。
⑦お風呂で体を洗ってもらったり、水しぶきを受けることを嫌がる。

★さて、伊澤の方から「触覚過敏」の話をさせていただいた後、今回の
 事例のお話が出ました。そして、それが過敏ではなく「鈍感」なので
 はないかと思われるが、「鈍感」ということはあるのか、という、幼
 稚園の先生のお尋ねでした。
 

★前述した「感覚統合理論」の「触角防衛」の中には、過敏の場合と鈍
 感の場合の両方が考えられていますから「鈍感」という場合も考えら
 れますと伊澤の方からお答えしました。

★すると、高校生のお嬢さんのお母さんが、実は自分の娘も小さいとき
 冬でも短パン・Tシャツでいたり、小さくなった服を着続けたり、小
 さくなった靴をずっと履き続けていた、というお話をされました。

★伊澤も、最初、出された事例の子どもさんは「鈍感」の方なのかなと
 考えましたが、お母さんの方から「過敏」と考えられる娘さんも同じ
 ことをしていたという話が出されて、今回の幼稚園のお子さんも「鈍
 感」ではなく「過敏」なのではないかと考えました。

★では、なぜ「過敏」の子どもさんが、冬に短パン・Tシャツでいた
 り、着れそうもないくらい小さくなった服を着続けたり、小さくなっ
 て履くと痛そうな靴を履き続けるのか?

★それで今回考えられた結論は「着心地が良かったのではないか」とい
 うことです。冬に短パン・Tシャツを着るというのは、服を着たとき
 の不快さが最小限だったからではないかと考えられます。更にいつ
 も、着心地が不快で気持ち的にも不安な状態が続くとき、たまたま
 「着心地がいい服」や「履き心地がいい靴」に出会い、本当に安心し
 て着たり履くことができたのかもしれません。だとしたら、小さくな
 ったとしても、不快な服を着たり、靴を履くよりもずっとそれでいた
 いと思ったのかもしれません。そのような内容を伊澤の方からみなさ
 んにお話ししました。

★もしそうだとしたら、このお子さんたちの体験は、壮絶な体験だった
 ことと思います。今回のような触覚過敏の子どもさんがいる場合、対
 応として、不快な状態を我慢して続けて慣れさせようとするのではな
 く、なるべく穏やかな刺激の受容をさせていきます。一番考えられる
 のは、綿100パーセントの衣服かと思います。もちろん、全てそれに
 するのは難しいかもしれませんが、できるだけ安心して着たり履いた
 りする衣服や靴を用意する配慮が必要と考えます。

★触覚過敏の状態は、いつ頃まで続くのでしょう?
 実は、15年以上続けている、療育教室 楽しい広場の発達相談の中の
 「言葉の遅れ」で来られた子どもさんのうち、大体2割~3割くらい
 は触覚過敏の子どもさんでした。親御さんがだいたい3才以降の幼児
 期の子どもさんの言葉の遅れを心配されて相談に来られ、お話をよく
 伺っていると、触覚過敏の特徴がたくさん出てきたのです。もちろん
 その時点で「触覚過敏」ということを親御さんたちはほとんどご存じ
 ありませんでした。そして、もう一つの特徴は、3才前後の頃から、
 過敏が穏やかになり、それと反比例するように言葉の発達が伸びてく
 る子どもさんが多かったということです。ですから、全てではないか
 もしれませんが多くの場合、過敏が消えることはないようですが、3
 才頃から生活に支障がない程度に過敏が穏やかになっていくのではな
 いかと考えます。

★最後に、現在、発達相談や早期療育機関の関係者の方々の中で「触覚
 過敏=自閉症」と考えられている方も多いかと思いますが、療育教室 
 楽しい広場では、もちろん「触覚過敏と自閉症は別物である」と考え
 ています。

 今回は以上です。

 

 

 

 

 

 

 

2021/10/26(火) 17:01 | izawa

 10月24日(日)10:00~12:00、釧路市生涯学習センター 学習室 602を会場に、「第1回 釧路療育セミナー」を開催いたしました。今回、3つの幼稚園から5名の先生方、そして、特別参加として、現在高校生のお子さんがおられるお母さん1名、計6名の方々にご参加をいただきました。

 今回のテーマは

『自閉症の迷信を吹き飛ばす 「自閉症ではない」と判断する2つのポイント~ 良くも悪くも人を見て行動する、ごっこ遊びができる』

でした。

 今回は、1990年代にイギリスのウタ・フリス氏が、認知心理学の立場から提唱した「自閉症児には心の理論が欠けている」という「言語・認知障害説」を基に、自閉症の原因を考え、それを基にして、我々の身近に自閉症と診断されたり、その可能性を疑われている子どもさんがいれば、認知心理学の立場から「自閉症ではない」と判断することができます、というのが中心の内容です。

 なぜ、わざわざ「自閉症ではない」と判断するのか。
 それは、言葉が出ないですとか、宇宙語のような言葉を話すですとか、突然違う話をし始めるですとか、一斉指示が通らないなどの発達の不安があるお子さんで、自閉症の診断を受けたり、疑いをもたれたりしているお子さんがたくさんおられます。

 でも、そういうお子さんたちの中で、認知心理学の「言語・認知障害説」から見ると、自閉症とは思われない子どもさんがたくさんおられると思います。しかし、そういう場合、「このお子さんは自閉症なのか、そうではないのか?」を論争するのが今回の目的ではありません。

 「自閉症」という言葉は、親御さんや幼稚園・保育園の先生などの思考を停止する影響力をもっていて、療育がそこでパタッと止まってしまい、動かなくなります。
 我々、療育教室 楽しい広場が行う「発達療育」では、認知心理学からみて「自閉症の可能性がない」と判断できれば、その「自閉症」という言葉をひとまず横にずらしておいて、そこから障害以外の原因を考え、適切な働きかけをして、お子さんの発達を伸ばし、問題行動をなくして、発達の不安を改善していきます。

 そのために、今回、認知心理学から見て「自閉症ではない」と判断できる2つのポイントを幼稚園の先生方にご説明しました。
 先生方に「早期療育の指導者になってほしい」ということではありません。幼稚園で発達に不安がある子どもさんがいたとき、もし。認知心理学からみて自閉症の可能性がないと判断すれば、指導の工夫で十分幼稚園の指導体制の中で、子どもさんの発達、成長が可能です、ということを理解していただきたかったのです。

 後半の先生方の事例研究では、いろいろな子さんのお話が出てきました。それに関しては、次回のブログでご報告いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/10/14(木) 12:04 | izawa

 10月17日(日)、9:00~16:00、札幌市社会福祉総合センター第1会議室ににきまして、こども発達相談、及びことば伸び伸び教室の療育教室を行います。料金は1時間3000円です。

 療育教室 楽しい広場が行っている「発達療育」の大きな特徴は、「教育としての早期療育である」ということです。

 現在、日本の早期療育には、大きく3つの種類があると思います。

1 医学としての早期療育
 これは、医師を中心にして、原因を医学から考え、発達に不安のある子どもさんに対して、病気を治す、あるいはリハビリなどをして大きく発達の遅れた能力を少しでも伸ばしていく、という基本的な考え方で、医師を中心に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士などの方々が携わっています。

2 福祉としての早期療育
 福祉による早期療育を行う機関として代表的なのが、障害児通所支援事業所です。通称、「児童デイサービス」ということが多いようです。今の障害児通所支援事業所は、平成24年の児童福祉法の改正に伴い、それまで、障害者自立支援法に規定される障害福祉サービスの一つだったものから、児童福祉法に基づく、障害児通所支援に位置付けられました。
 位置づけとしては、基本的に福祉の立場から早期療育を行います。通われてくる子どもさんは「障害児」なので、その障害を認め、障害をもっている能力以外の能力や生活適応力を伸ばして、将来の生活につなげようとするものです。

 

3 教育としての早期療育
 
「子どもを育てる」という立場から、子どもさんたちの発達の不安を改善していくものです。具体的には、まず子どもさんの発達の実態を把握します。内容は「発達段階」と「これまでの生活経験」の2つです。その発達の実態を把握する中から、原因は「不安となった発達(例えば言葉)に必要な生活経験が何らかの原因で不十分だったのではないか」と考えます。そして、その不十分であったと思われる生活経験が明らかになれば、その経験を補充する形でさらに積み重ねていき、それによって遅れていた発達が伸び、問題行動が是正され、発達の不安が改善していきます。対象の子どもさんは、障害があろうとなかろうと変わりません。

 

 さて、療育教室 楽しい広場のこども発達操舵と、ことば伸び伸び室は、上記3の「教育としての早期療育」を行っています。

 確かに障害をもっている子どもさんはおられます。しかし「発達の不安=障害」でも、もちろんありません。障害以外に、発達の不安の原因がたくさんあります。それを具体的に明らかにし、改善の方法を明示していきます。詳しくは、ホームページメニューの中の「楽しい広場 こども発達相談」「楽しい広場 ことば伸び伸び教室」をご覧ください。

 ご自分たちの子どもさんに発達の不安をおもちのお父さん、お母さん、どうぞ一度、お問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/10/13(水) 18:18 | izawa

 3才は、重要な発達がたくさん伸長し始める頃です。その中で将来の社会性につながるものとして、「自律性」というものがあります。「自分で自分の行動をコントロールする力」です。

 自分の行動をコントロールするということは、「自分の感情をコントロールする」ということです。この自律性は、人間生きていく間はいつの年代でも重要なことです。その一番最初が3才頃に始まります。

 「自分で自分の行動をコントロールする」ということは、具体的には「自己主張と自己抑制のバランスが取れる」ということです。3才くらいになりますと、だんだん周りの状況を見ながら、状況を判断して行動することができるようになります。それに社会的な価値判断も少しずつできるようになり、自分の行動をコントロールするということができてきます。

 具体的には、幼稚園や保育園、公園遊びなどで、次のようなことが考えられます。
(自己主張・自己実現)
   ・嫌なことは「いや」とはっきり言える
   ・入りたい遊びに自分から「入れて」と言える
   ・自分の医師や考えを自分から言える
(自己抑制)
   ・「かわりばんこ」ができる。
   ・「してはいけない」と言われたことはしない
   ・仲間と意見が違うとき、相手の意見を入れられる
   ・課された仕事をやり通す
 

★自律性が身に付いていない原因と改善策   
 3才~6才くらいの子どもさんで、自律性が身に付いていない、つまり「自分で行動をコントロールできない」子どもさんがいます。
 例えば
   ・かんしゃくが激しい
   ・友だちにすぐ手が出る
   ・友だちとトラブルが多い
などのような場合です。
 そういう場合、原因としては、それまでに「待つ」とか「我慢する」「順番を待つ」などという自己抑制の経験が極端に少ない場合が考えられます。つまり、「自己主張・自己実現」と「自己抑制」のバランスを取ろうにも、自己抑制の経験が少なすぎるとバランスの取りようがない、ということです。
 こういう場合の改善策としては、「待つ」「我慢する」「順番を守る」などの自己抑制の経験を、家庭や幼稚園・保育園などで経験させていくことが必要です。
 ことに、自己抑制は大人もそうですが子どもにとっても自分からやりたいことではありませんから、この場合は、親や大人が身に付けさせていく必要があります。

 今回は以上です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/10/12(火) 15:19 | izawa

 人間の「言語能力」というのは、発語、言葉を使った会話、言葉を使ったコミュニケーション(例えば、語る、指示する、会議をするなど)など膨大かつ複雑なものです。

 その中で、療育教室 楽しい広場の発達相談の中でとっても多いのが「言葉が出ない」「言葉がわずかしか出ない」というものです。つまり、2才、3才、4才になっても発語がない、あっても10個くらいのわずかしかない、という場合です。そして、親御さんとしては、「言葉を出したい」「言葉を増やしたい」と当然願います。

 では、どうしたらそのような子どもさんたちに言葉が出てくるのか?
 その答えを出すには、「では、一般的な発達として、子どもさんはどのように言葉が出てくるのか?」について、考え方を提示しなければなりません。

 

1 一般的な言語獲得理論

 子どもさんたちが言葉を出す、更にはその先の言語能力を獲得するという時、いくつかの説があります。
 一つは「環境説」。環境とは「大人の言葉」という意味で、大人の言葉や言葉がけなどの言語環境によって、子どもは言語能力を獲得していく、というものです。よく、以前「言葉のお風呂に入れよう」ということを聞きましたが、この環境説に近い立場の考え方でしょう。
 二つ目は「生得性重視説」。これは、環境からの刺激(大人の言葉)だけから最終的に大人の文法が獲得されるのは不可能であり、あらゆる言語に普遍的な文法を子どもは生得的にもって生まれてくるはずだ、というチョムスキーという人の理論が代表的です。
 三つ目は、「社会的相互作用を重視する」立場です。言葉の獲得に重要なのは、子どもの知的認知能力、そして、それに加えて「他者の意図を推測する能力」である社会的認知能力が重要である、とするものです。

 

2 「発達療育」における言語獲得の立場

 我々が行っている「発達療育」においては、上記の中の三つ目の「社会的相互作用を重視する」立場です。
 つまり、まず重要なのは認知的能力。これが言語発達の基礎になります。そして、もう一つ重要視しているのが人とかかわることから生まれる「伝えようとする力」です。その「伝えよう」とする経験の先に「発語」があり、言葉を使った会話、そして言葉を使ったコミュニケーションがあると考えます。

 

3 言葉が出ない原因

 今回は、言語能力のうち、「言葉を出す(発語)」「発語を増やす」ということに焦点を絞ります。
 療育教室 楽しい広場の発達相談やことば伸び伸び教室に、お子さんが「発語がない」「発語がわずかしかない」という不安で来られた場合、まつ、絵カードなどを使って認知能力を調べます。
 認知能力に大きな発達の遅れはないと判断すれば、次に「社会的相互作用を重視する立場」から、幼児期の中心となる養育者と思われるお母さんとのこれまでの「かかわり」についてお聞きします。
 すると、「発語がない」あるいは「発語が少ない」という子どもさんとお母さんとの「かかわりが極端に少ない」というケースがとても多いのです。「かかわりが少ない」ということは、おかあさんと要求、気持ち(心の状態)、感情、意思などを一方的にではなく、「お互いに伝え合う」場面が少ないということです。この「お母さんとのかかわりの極端な少なさ」が大きな原因と考えられるのです。

 

4 どうやって言葉を出すか

 子どもさんとお母さんとのかかわりが極端に少ないことが、発語のなさ、少なさの原因と考えられ場合、お母さんに日常生活の中で子どもさんとのかかわりを、できるだけ増やしてもらうようお願いします。
 具体的には、一日10分で良いので、一緒に遊ぶ時間を作ってもらいます。その時、一つ条件があります。積み木、お人形、ブロック、絵本、おもちゃなど、何でも構わないので「物」を使って遊んでもらいます。この物を使って遊ぶことによって、子どもさんとお母さんが一緒に「同じ物を見る」「同じ物を操作する」などによって、「共同性」が生まれ、「経験を共有する」ことができます。
 この「共同性」によって、例えばアンパンマンやばい菌マン、ドキンちゃんなどの絵が描いてある積み木がいくつかあったとして、子どもさんはお母さんが一緒に遊ぶことによって、お母さんが喜んだり、時には怒ったりする感情や気持ちを客観的に感じることができるようになります。
 そして、同じものを使って遊ぶ経験を共有していくことにより、その中で生まれる感情や気持ち、要求などを、子どもさんはお母さんに伝えられるようになります。お母さんはもちろん、それに応えてくれるでしょう。それが「かかわる」ということであり、「伝え合う」ということなのですね。

 もちろん、「伝え合う」という経験の他に、大人の「言葉を聞く」ということ、そして言葉を出すための基礎になる「声を出す」ということ、そして舌、唇、ほお、あごなどの口腔機能の向上のために「食べる」ということも、発達的な経験として必要です。

 これらの発達を基盤にして、「伝え合う」という経験が原動力となって発語につながっていくものと考えます。

 今回は以上です。

 

 

 

 

 

 

 

2021/10/11(月) 16:01 | izawa

 幼児期の発達の不安の中に「一斉指示が通らない」があります。幼稚園・保育園などで先生から指摘されることが多いですね。
 「一斉指示が通らない」についてはこれまでも何回かこのブログで説明をしてまいりました。しかし、これについて不安に思われている親御さんが今でも、全国でたくさんおられると思います。先日の10月3日に札幌で行いました療育教室の中にもおられました。ちょうど、就学にもかかわってきますので、もう一度ここで説明いたします。
 

1 「一斉指示が通らない」とは? 
 「一斉指示が通らない」というのは、幼稚園や保育園などの年少、年中、年長の子どもさんで、教室で例えばみんなんで絵を描こうとするとき先生の準備の話、具体的には「まず、自分のお道具箱を持ってきてください」「紙を取りに来てください、今日は白と黄色の紙を使います」など、先生が順番を追ってやることをクラスの子どもたちに話していくとき、自分だけ、ボーっとしていたり、何をやっていいか分からなかったり、仕方がないので隣や近くのお友だちの動きを見ながら、みんなについていくというようなとき、そしてそういうことが何回も続くようですと先生方から「一斉指示が通らない」と指摘を受けます。

 

2 なぜ、「一斉指示が通らない」がそんなに問題なのか?
 どのお子さんも最初は一斉指示が通らないのですから、「一斉指示が通るようにすればいいのではないか」と単純に考えますが、現実はそうはいかない場合が多いのです。
 例えば、年中さんの子どもさんにそういう子どもさんがいたとき、「まあ、そういう子どもさんも中にはいますよ」と、どっしり構えてくださる先生もいらっしゃいます。
 しかし、一方で「一斉指示が通らない?それは大変だ、自閉症かもしれない」と考える先生もたくさんいらっしゃるのも事実です。そのように考えられる先生がおられて、親御さんに「お子さんは一斉指示が通りません」と言ってくるということは、間接的に「お子さんは自閉症かもしれませんから、発達相談を受けられて、早期療育を受けられてはどうですか?」ということをおっしゃられている場合が多いようです。
 これで、お分かりのように早期療育関係の方々や保育園・幼稚園の先生方の中に「一斉指示が通らない=自閉症」と考えられている方が多く、そういう考えをおもちの先生方であれば、「一斉指示が通らない」ということを重大な問題と考える可能性は十分あります。

 

3 「一斉指示が通らない」原因は何か?
 我々「発達療育」では、もちろん自閉症とは無関係と考えます。では、原因は何か?
 これまで、療育教室 楽しい広場の発達相談にも「一斉指示が通らない」と先生に言われて、来られたお子さん、親御さんがたくさんおられました。そこから考えていきますと、原因は二つ考えられます。
 一つは、3才くらいまで、「おうちで伸び伸びと過ごしている」場合です。伸び伸び過ごすのは良いのですが、自分でやれそうなこともお母さんやお父さんがやってあげていたり、「待つ」とか「ちょっと我慢する」という経験をほとんどしていない場合です。そういうお子さんは、言葉が遅れる場合もあります。しゃべる必要があまりない場合は遅れる可能性があります。そして、「自分を抑える経験」が少ない分「自分中心」になってしまいます。
 そういうお子さんが3才を過ぎて幼稚園や保育園の集団生活に入った場合、自分の身辺処理がなかなかできなかったり、大人とのコミュニケーションはできるのですが、友だちと一緒に遊んだり、話しをしたり、集団で行動をすることなどが、他の子どもさんより遅れるという場合が考えられます。

 そしてもう一つは、「視覚優位」の子どもさんの場合です。2021年10月9日付のブログで、それについては説明をいたしましたが、「視覚優位」のお子さんの中で、極端にお母さんとのかかわりが少なかった場合で、言葉が遅れたり、「待つ」とか「少し我慢する」などの自分を抑える経験が少ない場合、「おうちで伸び伸びと過ごしている」場合と同様な状態になることが考えられます。

 この二つのパターンの子どもさんに共通しているのは「自分中心である」ということです。つまり、その分「幼い」と感じられるということです。そして、そのような子どもさんの場合、まだ仲の良いお友だちがいたり、何人かのお友だちと一緒に遊ぶということができていない場合が多いのです。つまり、まだ集団の中にいても意識は自分の周りしかないということです。ですから、10人とか20人の集団の中で、他のお子さんたちも意識できていないのですから、その集団に向かっての大人である先生の言葉を聞き分けるということは難しいと考えられます。

 

4 「一斉指示が通る」ために何をしたら良いか?
 
これまで、考えてきたことを重ね合わせますと、何をすれば良いかが見えてきます。
 まず、友だちができて、数人の友だちと遊ぶことができることです。それができるようになると、数人の友だちの集団の中で遊んだり、行動することの中で、少し向こうにいる〇〇くんと話したり、後ろにいる△△ちゃんが自分を呼んでいることなどが分かるようになり、その集団がだんだん大きくなり、大きい集団の中でも友だちや先生を意識できるようになってきます。そこまでくれば、人間の耳には人の声を聞き分ける能力が備わっていますから、集団の中での「一斉指示が通る」ようになっていきます。
 ここで一つ、集団の中で「一斉指示が通る」ようになるためには、幼稚園や保育園の先生方のご指導が必要になります。
 具体的には、まだ友だちがいないようであれば、何人かの友だちのごっこ遊びなどの中に先生が最初一人入っていただいて、一緒にお子さんも参加するようにし、何回かの経験の後は先生が抜けて、子どもたちだけで遊ぶように先生方にお願いしてはいかがでしょう。

 ちなみに、これまでにも、何人ものお母さんから「一斉指示が通るようになった」とご連絡がありました。

 今回は以上です。

 

 

 

 

 

 

2021/10/10(日) 12:51 | izawa

 絵本の読み聞かせは、幼児期の子どもさんに対する大事な教育の方法の一つです。
 その意味は、二つあると思います。一つは、「注視する」ということです。絵本を見つめる、読んでいる人を注視する、ということです。
 「見る」ということは、子どもさんにとって、「考える」ということにつながります。例えば、いろいろな形、あるいはいろいろなキャラクターの絵の積み木を前にして、並べたり積んだりしながら、いろいろなことを考えていきます。そして、それは、他の場面でも考えることにつながっていきます。「考える」ことの入口は「見ること」なんですね。

 そして、もう一つの意味は、「ものごとを順番に記憶していく」ということです。1才、2才、3才、4才、5才と年令に応じて、絵本の中の文章の量、内容の複雑さが増していきます。それらを通じて、絵本の読み聞かせを聞きながら、順番に聞いて記憶をしていく経験をしていくことになります。
 いろいろな内容の文を聞いて、記憶して、考えて、時には頭の中で言葉を並び替えながら相手に伝えていきます。こういう、言葉を使ったコミュニケーションの基盤になるのが「ものごとを順番に記憶していく」ということです。

 ところが、時に絵本の読み聞かせをじっと聞いていられず、ページを次々にさっさとめくって進みたがる子どもさんがいます。自分のお子さんや周りにそういう子どもさんがおられませんか?なぜ、そのように進みたがるのでしょう?
 実は、療育教室 楽しい広場の発達相談やことば伸び伸び教室でも、これまでにもたくさんおられました。その子どもさんたちの大きな特徴は、前回のブログでも説明いたしました「視覚優位」の子どもさんたちなのですね。これは、見事にほとんどの子どもさんがそうでした。
 ではなぜ「視覚優位」の子どもさんたちがそうなるのか?「視覚優位」の子どもさんたちは、絵本を見ることは好きなんですね。お父さんやお母さんも、自分の子どもさんが「絵本は好きだ」と思っていらっしゃいます。しかし、絵本を読み聞かせていくと、ページをどんどんめくって進みたがる、というのも感じていました。でも、そのことをそんなに深く考えておられなかった、ということですね。
 絵本をどんどんページをめくって進みたがるというのは、多分、「視覚優位」の子どもさんたちは、絵を見ているのだと思います。その反面、文は聞いていない。だから、お母さんや先生が絵本を読み聞かせても絵を早く見たいから次のページに進みたがるのでしょう。

 さて、「絵本を読み聞かせる」ことの大事な意味の一つが、「ものごとを順番に記憶していく」ということでした。それは、言葉による会話、コミュニケーションにつながっていきます。もちろん全てではありませんが「視覚優位」の子どもさんで、発語が遅れる、会話力が遅れる、言葉でのコミュニケーション能力の発達が遅れる場合が出てきます。療育教室 楽しい広場でもそうでした。
 ただし、これは障害ではありません。これを「障害だ」という人も少なからずいることも事実です。
 しかし、療育教室 楽しい広場では、もし、子どもさんが「視覚優位」の子どもさんで、発語や言葉の発達が遅れているとしたら、その対応策の一つとして「絵本の読み聞かせ」を続けていきます。実際、最初はすぐ次のページに行きたがっていた子どもさんでも、2~3回経験していけば、だんだんじっくり絵を見て、話を聞くようになります。そして、それをおうちや幼稚園・保育園などで経験していけば、子どもさんは変わっていきます。つまり、「順番にものごとを記憶していく」経験を重ねていくことにより、発語や言葉の発達も伸びていくということなのです。

 今回は、以上です。

 

 

 

2021/10/09(土) 18:07 | izawa

 これまでも、療育教室 楽しい広場の「発達療育」では、「視覚優位の子どもさん」をたくさん取り上げ、そしてこれからもたくさん取り上げることになると思います。

 これまでも以前にこのブログで何度か取り上げましたが、ここでもう一度「視覚優位の子どもさん」についてまとめておきたいと思います。今後「視覚優位の子どもさん」について説明をする場合は、今回のブログを見ていただこうと思っています。

 

【視覚優位の子どもさんについて】

1 視覚優位と思われる子どもさんの特徴

 ・記憶力が抜群に良い
 ・一度見たものを細かいところまで覚えている
 ・絵本や図鑑を見るのが大好き
 ・テレビなどの画面で、小さい時からアニメの番組を見るのが大好き
 ・アニメのキャラクターや車の名前などを膨大な数覚えている
 ・2才~5才くらいで、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字を
  読むことができる 

 

2 視覚優位とはどういうことか?
 
「視覚優位」と思われる子どもさんの共通点は、「視覚的な情報をたくさん脳の中に記憶しているのではないか」ということです。つまり、通常よりも視覚的情報、例えば自分の大好きなアニメの動画、そしてそれに伴う歌やセリフ、大好きな絵本や図鑑の絵、あるいはたくさんの数のアニメのキャラクターや車、あるいは街の中にある、気に入った商標のマークなど、たくさん記憶していると考えられます。そして、そのように考えると、上記の特徴は説明がつきます。

 

3 幼児期の早期療育の中で、なぜ視覚優位を注目するのか?
 
これまで、15年間、療育教室 楽しい広場として、早期療育を行ってきましたが、その中で次のような発達に不安のある子どもさんがおりました。
 ・発語がない
 ・発語が少ない
 ・言葉の発達が遅い
 ・友だちと遊べない
 ・ボーっとしていることが多い
 ・宇宙語のようなものを話している
 ・突然違う話をし始める
 ・突然コマーシャルを言い出す
 ・話しかけてもこちらの言ったことを理解しているかどうか分からな 
  い
 ・集団行動の中で、一斉指示が通らない

 実は、これらのような子どもさんの中に、親御さんから話を伺っていくと「視覚優位の特徴」をもっている子どもさんがたくさんおられました。たくさんというのは、半数以上はもちろん、6割、7割くらいの割合です。相談やことばの指導を行う場合は、療育記録を毎回つけますので、その記録に「視覚優位」書かれた子どもさんがたくさんおられたということです。
 つまり、幼児期の子どもさんの発達の不安の原因として、この「視覚優位」がかかわっている可能性が多いということになります。

 

4 では、なぜ「視覚優位」になるのか?(原因)

 なぜ、視覚優位の特徴をもつ子どもさんが出現するのでしょう。早期発達相談や早期療育の関係者の中で、「視覚優位=自閉症」と考えられている方が多いという話は聞いたことがあります。

 療育教室 楽しい広場では、視覚優位と自閉症は無関係と位置づけています。では、「視覚優位」になる原因は何か?

(1)カウフマン理論
 1983年にアメリカのカウフマン夫妻が作った「K-ABC」という知能検査があります。日本では、1993年に日本版が標準化され、2013年には「K-ABC-Ⅱ」の日本版が刊行され、日本でも使われている知能検査の一つです。
 さて、この「K-ABC」という知能検査の理論モデルが「カウフマン理論」と呼ばれています。その中で、人間がもっている脳の認知処理機能の類型として、二つ挙げられています。それが「同時処理機能」と「継次処理機能」です。

(2)同時処理機能、継次処理機能の定義

 カウフマンモデルの中で、次のように定義されています。

(同時処理機能)
 ・複数の情報をまとめ、視覚的・運動的な手がかりを使って全体とし
  てとらえ、処理していく。
 ・視覚的な記憶力、全体を部分に分解する能力、空間認知能力などに
  結びついていると考えられる。
 ・日本版の「K-ABC」では、複数の視覚的な情報をまとめる力を
  示している。
(継次処理機能)
 ・連続した刺激を聴覚的・言語的な手がかりを使って、一つずつ順番
  に分析し、処理していく。
 ・短期記憶、情報の系列化の能力などに結びついていると考えられる
 ・日本版の「K-ABC」では、複数の音声や動作を、聞こえたとお
  り見たとおりにの順番で、どの程度真似ることができるか等の力を
  示している。

 ここで、具体的な例で考えてみますと、例えば、「7058391」という7ケタの数字を覚えようとすると、「なな、ぜろ、ご・・・・」と口で唱えながら順番に覚えていくのが「継次処理機能」、一方、数字を見て写真を撮るように全体を一括して記憶するのが「同時処理機能」と考えられます。

(3)視覚優位とは「同時処理機能」が強いこと
 「K-ABC」の知能検査では、検査結果で「同時処理機能」と「継次処理機能」のどちらが強いかが分かります。
 通常、人間はこの二つの機能のうち、「継次処理機能」の方が強いと考えられています。しかし、中には「同時処理機能」の方が強い人がいます。そして、この「同時処理機能」の方が強い子どもさんが、前述した「視覚優位の特徴」をもった子どもさんと考えられます。つまり、「同時処理機能」が強いとしたら、「視覚優位の特徴」は十分考えられるということです。
 療育教室 楽しい広場では、「視覚優位」と考えれる子どもさんは、同時処理機能が強い子どもさんではないか、と考えています。

 

5 「視覚優位」と発達の不安の関係

 本来、視覚優位だからといって問題があるわけではありません。よく、映画監督で、場面ごとのスケッチを、あっという間に描いてしまう方がいらっしゃいますが、そういう方は、多分「視覚優位」の方と思われます。こどもさんでも、就学前に、ひらがなやカタカナ、数字、アルファベットをたくさん読めることは、なにも悪いことではありません。
 しかし、「視覚優位」の子どもさんの中で、もちろん全てではなく一部ですが、発達の不安をもつ子どもさんがおります。一番多いのが、発語の遅れ、言葉の発達の遅れです。

(1) なぜ、言葉が遅れるのか?
 その理由は、もちろん障害ではなく、同時処理機能が強い分、相対的に言葉の発達にとても重要な役割を果たす「継次処理機能」を使った情報処理の経験が少なかったのではないか、と考えます。
 「同時処理機能」でてっとり早く情報処理していくうちに、手間のかかる「継次処理機能」での情報処理が少なくなり、偏ってしまったのではないか。
 言葉というのは、物をただ見て「バナナ」というように言葉が出るわけではなく、お互いに意思や要求、感情などを「伝え合うこと」によって出てくると考えられます。「同時処理機能」が強く、偏ってしまった場合、言葉が出てくるために必要な「伝え合う」という経験が、「継次処理機能」を使う経験が少ないために少なくなってしまったのではないかと考えられます。

(2)なぜ、会話能力が遅れるのか?
 「同時処理機能」が強いと思われる子どもさんで、幼稚園や保育園の先生、あるいは友だちと会話をしていて、相手の言ったことにスムーズに答えられない、言い方がちょっとおかしいなどと感じられるなど、会話能力の遅れがある場合があります。その場合でも、「同時処理機能」が強い分、「継次処理機能」が少し弱いのではないか、と考えられます。
 それはなぜか?
 「同時処理機能」が強いと視覚的な情報をたくさん記憶し、あふれているので、お母さんや幼稚園や保育園の先生とのかかわりのとき、そちらの方に気を取られて、お母さんや先生とのやり取りがなおざりになったり、大ざっぱになりがちなのではないかと考えます。
 「同時処理機能が強い」子どもさんお場合、ボーっとしていることが多かったり、自分の世界に入ってしまうことが多かったり、突然違う話をし始めることがあります。つまり、言い換えると、言葉や言葉以外の表情や動作などを使って、お互いに「伝え合う」という経験が少ないのではないかと考えます。その結果、「継次処理機能」が少し弱いのではないかと考えられます。
 「継次処理機能」は、順番にものごとを聞いたり見たり、そしてそれらを分析しながら記憶していくことです。それは、言葉、そして言葉を使った「会話」をする上では特に必要なことです。「会話」は、相手が話したことを順番に記憶し、分析し、それによって相手に発する内容を考え、相手に分かるように言葉を並び替え、それを話すことで相手に伝えることです。
 「継次処理機能」が同じ生活年令の子どもさんお発達よりも弱いとすれば、順番を考えながら内容を組み立てていく「会話」がぎこちなかったり、うまくできないことは当然考えられることです。
 しかし、これは相手のことも考えながら、言葉あるいはそれ以外のいろいろなコミュニケーション手段を使って「伝え合う」コミュニケーションや、言葉による「会話」の経験を積むことによって、その不自然さが改善されていくと考えられます。
 
  ここでまとめます。

・視覚優位自体、悪いことではない。
・視覚優位の原因と考えられる「同時処理機能」が、相対的に「継次処
 理機能」より、情報処理の機能として強く偏ってしまった場合、発達
 の不安が生じる可能性があるのではないか。

以上です。

 今後、いろいろな発達の不安に関して考える際に、内容によっては、今回の「視覚優位」についての説明を利用していただけたらと考えております。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/10/06(水) 13:03 | izawa

 昨年11月に開催を予定しながら、コロナウイルス感染拡大の影響のため、開催を断念いたしました「第1回 釧路療育セミナー」をこの10月24日(日)に開催する運びとなりました。

 テーマは
 『自閉症の迷信を吹き飛ばす 「自閉症ではない」と判断する2つのポイント~良くも悪くも人を見て行動する、ごっこ遊びができる』
です。
 主な内容は、以下の通りです。

 (日時)令和3年10月24日(日)10:00~12:00 

 (会場)釧路市生涯学習センター(まなぼっと) 学習室 602

 (対象)幼稚園教諭、保育士

 (会費)お一人 2000円(資料あります。)

 詳しくは、ホームページメニュー「療育セミナー」に掲載しておりますのでご覧ください。

 たくさんの方々のご参加をお待ちしております。