8月23日(日)の療育セミナーで説明をさせていただいた内容の中に、「発達的視点」というものがあります。子どもさんの発達の不安の原因を「障害」以外から考えるときの視点です。
「発達的視点」とは、人間のいろいろな発達には「一定の流れがある」ということを前提に、その発達の流れを基本に置き、個々の子どもさんの発達の段階、状態を正確に把握した上で、その基本的な流れと比較・検討し、発達の不安の原因を明らかにしていくということであり、その原因に応じて適切な指導と支援を行い、発達の不安を改善していくのが「発達療育」です。
比喩的に表現しますと、発達に不安をもつ子どもさんが今、「発達という地図の上のどこにいるのか?」(発達の実態把握)、そして、そこからどの方向に、どのような方法で進むかを考えていく、ということです。
セミナー当日、実際にあった事例を基に、3才で発語が6つで、じっとしておらず、お母さんとつないでいた手を放すとどこへ飛んでいくかわからない、という子どもさんの、「発達的視点」から見た発達の実態の把握の時のチェック項目について説明をいたしました。
ここでは、具体的な内容は除き、その項目を挙げておきます。
★発達の実態把握のチェック項目
1 認知~この場合、言葉の理解でチェックする。基本的な動詞や形容詞
が理解できていれば、3才の発達に入っていると考える。
2 ことば
(1)発語の時期と数
(2)言語理解~この場合、認知と同じと考える。
*ここで重要なポイントは、発語がない、あるいは発語の時期が遅いか
らと言って、知的な遅れがあるとは言えないこと。このお子さんの場
合も発語の時期が遅いが、動詞の理解から考えると、知的な遅れはな
いと判断した。
3 コミュニケーションの基本ができているか?
→ 「相手を見て、人の話が聞けるか」
4 自分の行動をコントロールできるか(自律性)
→ 自己主張と自己抑制のバランスがとれているか?
5 お母さんとのかかわり
→ 一日の中でのかかわりの量、質、おじいちゃん、おばあちゃんの
ところで多くを過ごしているか、など。
6 発達から見た、自閉症の可能性の有無は?
(1)良くも悪くも人を見て行動しているか。例えば、お母さんの機嫌の
良いときと悪いときで態度を変えているなど。
(2)見立て遊びやごっこ遊びをしているか。
*両方、確認できれば、自閉症の可能性はないと判断する。判断の基準
になるのは「心の理論」である。
7 行動面の課題
→ 例えば、じっとしていない、一人で遊ぶ、自分の好きなことしか
しないなど。
8 好きなもの
→ 例えば、アンパンマン、恐竜など。
当日説明をしました、療育の目標、方法、結果については、ここでは省きます。
ということで、このようなチェック項目で発達を把握しながら、この子どもさんが、「発達の地図上のどこにいるのか?」をはっきりさせていきます。