6月11日(金)、札幌市豊平区にあります、発達支援センター「悠悠クラブ」におきまして講演をさせていただきました。テーマは「言葉の遅れと親子のコミュニケーション」でした。以下、主な内容を書き記します。
1 「言葉が発達する」とは?
通常、子どもは3才頃から、言葉によるやりとり、つまり「会話」が成立する。そのときの「言葉が発達する」ということには、次の3つの要素が考えられる。
(1)言葉を理解する。
→ 認知的な発達が十分なレベルまで発達することが必要である。
(2)言葉を発する。
→ それまでの日常生活の中で、「声」が出ていること、更に、食べるときによく咀嚼をして、発語をするための筋肉や機能を高めることが必要である。
(3)言葉を使う。
→ 言葉に加え、「自分の意図を伝える」「人の意図を読みとる」という、コミュニケーションの能力の発達を合わせて、「言葉を使ってコミュニケーションをする」能力の発達が必要である。
2 子どものコミュニケーションと言葉の発達の流れ
〈6ヶ月〉 ・意図的な身振りコミュニケーションの出現 →何かを伝えたい
〈10ヶ月〉 ・「指さし」の出現 → 3つの意味を含んでいる。(言葉、コミュ
二ケーション、他者との注意の共有)
〈1才~〉 ・有意味な「言葉」を発するようになる。
→ 「マンマ」と言ったり、「アイ」と言って、お母さんにおもちゃ
を渡すなど。
〈1才6ヶ月~〉 ・ものの名前(名詞)を急速に覚えていく。(命名の爆発)
・おおむ返し(反響言語)の出現
→ 連続的な音の流れの中から、意味をもつ単語だけを選択
に模倣する。
(例)おやつを食べるとき
母親「どうぞ」 → 子ども「ドウゾ」
「おいしい」 → 「おいしい」
「ありがとう」 → 「アリガトウ」
・「心の理論」の発達
『田中さんは、【天気予報は雨だ】と思い、【濡れたくない】
と望んだので、傘をもってきた。』
↓
人の心の状態を推定し、それに基づき人の行動を解釈し
予測する能力。(目に見えない心の状態を推測し、行動を
予測するので、「理論」と呼ばれている。)
↓
他の人の行動から、意図(考え、心の状態など)
を推測する能力の発達
〈2才~〉 ・発語器官の機能はほとんど成人並になる。
・構音(一つ一つの発音)が正確になり、他人に通じる程度に
なる。
・よくしゃべる、絶えずしゃべる。
・身体の名称の理解ができる。
〈3才~〉 ・一般的なものの名前をほとんど言える。
・「言葉での会話」が成立する。「言葉の世界」になっていく。
→ 動詞、形容詞が分かる。
二語文、三語文で話す。
・「ごっこ遊び」の出現
→ 人や周りの状況を見ながら、物事の真偽の判断を棚
上げしつつ、想像的な活動をして遊ぶ。
〈4才~〉 ・「内言」の出現
→ 音声を出さなくても、頭の中野言語だけで考える。
・一文を正しく言える。
・発音がほとんど間違わない。
・頭の中で考えていることや、知ろうと思っていること、経験し
たことを話す。
3 「言葉の発達が遅れる」とは、どういうことか?
幼児期において、「言葉の遅れ」を心配するとき、ポイントとなるのは「発語」である。「発語がない」「発語が遅い」「発語が少ない」「おおむ返しが多い」などである。しかし、言葉の発達を見ていく場合、「認知的な発達」「コミュニケーション能力の発達」、そして「発語」の3つの要素を考えなくてはならない。
言葉の発達の一つの目安になるのが、3才の発達段階である。つまり、「会話が成立する」「言葉の世界に入る」と言うことである。この、3才の発達段階になるためには、「認知的な発達」「コミュニケーション能力の発達」、そして、「発語」の3つの発達がそろわなくてはならない。つまり、言葉の発達の遅れがあるかどうか、把握をするとき、ポイントになるのは、「発語」であるが、言葉の発達の実態を把握するためには、あくまでも、「発語」のほかに、「認知的発達」と「コミュニケーション能力の発達」を把握しなければならない、ということである。言い換えると、「発語」が遅れている、ということは、基本的に「認知的発達」と「コミュニケーション能力の発達」も遅れている、と考えられるのである。
言葉の発達の遅れには、大きな発達の遅れ(1才半以上)と、発達の個人差の範囲の遅れ(1才以内:つまり、同じ生活年令の発達の範囲以内と考えられる)の、2つが考えられる。それを判断するためには、「発語」だけではなく、「認知的な発達」「コミュニケーション能力の発達」などの、知的な発達全体の実態を把握する必要があるのである。