去る、8月1日(日)、札幌市社会福祉総合センターにおきまして、第4回親子発達サークルを開催いたしました。テーマは「子どもの感覚過敏と発達の遅れを考える」~広汎性発達障害にに間違われやすい、感覚過敏による発達の遅れ~でした。当日は、小さい特から感覚過敏があり、3才の時に広汎性発達障害と診断をされた現在5才(幼稚園年長組)の女のお子さんと、妹さん、そしてご両親、それから小さいときから感覚過敏があり、今はだいぶ落ち着いた小学校1年生の女のお子さんとご両親の7名の方に参加いただきました。
今回は、感覚過敏とは何か、感覚過敏と広汎性発達障害、感覚過敏に対する対応等について、書き記します。
なお、「感覚統合」の理論では「触覚防衛」という言葉を使います。感覚統合の考え方では、触覚防衛=感覚過敏ではない、という考え方をされているように、聞いておりますが、ここでは、私としては触覚防衛=感覚過敏として、「感覚過敏」という言葉を使っておりますので、ご理解下さい。
*なお、今回の感覚過敏の内容についての、参考文献は次の二つです。
○「自閉症と その関連症候群の子どもたち」:Johanna M.Anderson著、小越千代子訳、協同医書出版社、2004
○「子どもの発達と感覚統合」:A.Jean Ayres著、佐藤 剛監訳、協同医書出版社、1985
1 感覚過敏とは?
(1)触覚過敏
人に触られるのを極端に嫌がる。あるいは、人と握手や手をつなぐとき、手の汗ばむ感じが嫌で、握手や手をつなぐことを極端に嫌がる。指先にのりを付けるのを嫌がる。芝生や砂の上を裸足で歩くのを嫌がる。鬼ごっこをしていて、タッチされると「痛い」と叫ぶ。乳幼児期では、母親でも抱っこをされたり、手をつなぐことを嫌がる。一日中泣き叫ぶことが多い、など。
(2)聴覚過敏
①ある特定の高さの音を嫌がる。
→例えば、赤ちゃんの泣き声、外を通るトラックの音などを極端に嫌がる。
②音の大きさを嫌がる。
→工事の音が気になる。運動会の時のピストルの音や、花火・クラッカーなどの音を怖がる。
③不規則な音を嫌がる。
→クラシックなど比較的規則正しい音楽、あるいはメトロノームなどのような規則正しい音が好きで、ロックなどの音楽を驚嘆に嫌がる。
④その他
→乳幼児期、人に声をかけられると泣き叫ぶ。
(3)臭覚過敏
臭いに敏感である。水を飲むときに必ず臭いを嗅ぐ。食べ物の臭いを必ず嗅ぐ。特定の食べ物を極端に嫌がる。(例えば、煮干し、ネギ、えび、いかなど」幼児期に激しい偏食がある場合、口の中の触覚過敏とともに、この臭覚過敏の可能性が考えられる。また、幼稚園や保育園、学校等の給食で、いろいろな料理の臭いが混ざると、物が腐ったような臭いに感じて、給食が食べられない、ということもある。
(4)視覚過敏
①暗いところを極端に怖がる。
②物がたくさんあるところで、気が散りやすい。
2 「感覚統合理論」における触覚防衛の定義と原因(「子どもの発達と感覚統合」、A.Jean Ayres著、佐藤 剛監訳:協同医書出版社、1985」より引用)
(1)触覚防衛とは?
触覚刺激に対して、拒否的、感情的に反応する傾向を言い、その反応は、ある状態のもとのみで起こる。我々は、不意に手を触られたり、皮膚の上を虫がはったりするような、不快な触刺激には拒否反応を示す。触覚防衛を示す子どもにとって、触覚刺激が多くなると、このような不快な反応を引き起こす。他の人々がほとんど感じない触刺激にも、敏感に反応する。また、直接皮膚に触られるだけでなく、他人から触られるかもしれないという、恐れだけでも、触覚防衛反応を引き起こす。
(2)推定される触覚防衛の原因
皮膚や身体にふれる衣服からの触刺激は、常時、私たちの神経系に入ってきている。しかし、これらの刺激のほとんどは抑制されてしまい、神経系が反応するのを防いでいる。これは、「抑制作用」と言われる、神経系の一部が、他の部分の過剰な反応を起こすのを防ぐ神経処理過程による、とされる。しかし、触覚防衛をもつ子は、この制御が不十分なため、子どもを不快にして、動き回らせてしまう。
3 広汎性発達障害に間違われやすい感覚過敏
よく、乳幼児期に、母親に抱っこされるのを嫌がったり、手をつなぐことを嫌がる子どもさんがいる場合、母親との関係性が希薄であり、広汎性発達障害、あるいは自閉症であると見られることがよくある。楽しい広場の療育相談では、乳幼児期から感覚過敏があり、その上、言葉の遅れや認知的な発達の遅れがあったが、3~4才頃からだんだん感覚過敏が落ち着き、それに反比例するように言葉が出るようになり、会話ができてくることにより、認知的発達が急速に上がって、生活年令に応じた発達段階になり、それとともに母親や他の人とのコミュニケーションが豊かになり、コミュニケーションがスムーズになった、という幼児期の子どもさんのケースが4件あり、そのうち2件は、広汎性発達障害の診断がついていた。やはり、そういう子どもさんが、広汎性発達障害に間違われないためにも、乳幼児期の感覚過敏のチェックは、とても重要である。
3 感覚過敏に対する対応
基本的に、感覚過敏と言うことが 分かれば、日常生活の中で、できるだけ刺激を落ち着いて受容できるよう、工夫することが必要と考えられる。
例えば、触覚過敏の幼児の場合、
(1)ぬいぐるみをなでる。
(2)暖かい物を手にもつ、あついは、着る。
(3)枕を膝に乗せて座る、あるいは枕を周囲において座る。
(4)毛布にくるまる。
など、柔らかい、緩やかな感触の刺激を受容させると言うこと、そして
(5)子どもの肩に手を置く。
(6)子どもの背中をリズミカルになでたり、軽くたたく。
(7)もし、子どもが受け入れるならば抱きしめる。
など、身体的、そして精神的な、人の柔らかく、暖かい感触の刺激を受容させることによって、日常生活の中で、落ち着いた刺激の受容を積み重ねていくことができる、と考えられる。
臭覚過敏や聴覚過敏の場合は、できるだけ激しい臭いや音の刺激を避ける、という配慮が必要と考えられる。幼児の場合、その他に、口腔の感覚過敏ということも考えられる。固めの食べ物、あるいは刺激の強い味の食べ物を口から出してしまうような場合、単なる好き嫌いではなく、口腔内の感覚過敏の可能性も考えられる。
その場合の対応としては、刺激の少ないものを食べさせる、ということの他に、ストローを使って飲み物を飲んだり、シャボン玉を吹くなどして、口の中に圧力の強弱による刺激の反応を経験したり、バンゲード法などの方法で、指を使い、口の中のほおの裏側の表面や歯茎を押して刺激をし、過敏を取っていく、ということが考えられる。
感覚過敏は、人によってその程度は違う。日常の生活に大きく支障が出る場合もあれば、生活にそれほど支障が出ない場合もある。また、中学生、高校生になっても感覚過敏が残る場合もあれば、3~4才ころに過敏が落ち着いて、日常生活にほとんど支障が出なくなる場合もある。前述したように、幼児期に感覚過敏があり、それとともに言葉や認知的な発達が遅れたため、広汎性発達障害や精神遅滞と診断された子どもさんが、3~4才ころからから過敏が落ち着き、言葉が出始めるとともに、急速に言葉や認知面が発達し、それにつれて人とのかかわりも落ち着いてきて、だいたい就学する頃(5~6才)には、知的な発達や人との関係性の発達が、生活年令に応じた発達になった、という子どもさんが、楽しい広場の療育相談に、何人も来られた。幼児期の感覚過敏のチェックと適切な対応は、やはり、とても重要である。