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izawaさんのブログ

2021/03/08(月) 16:54 | izawa

 療育教室 楽しい広場への相談には、「言葉の遅れ」のご相談がとても多いです。一つは「発語の遅れ」。そしてもう一つは言葉は出ているが、言葉を使ったコミュニケーションの不自然さ、違和感などの不安です。

 言葉を使ったコミュニケーションの不安の具体的な内容は、以下の通りです。この場合は、基本的に3才以降の子どもさんを想定しています。

1 おおむ返しが多い
2 独り言や意味のよくわからない宇宙語を話す
3 突然、違う話題の話をし始める
4 ボーっとしていたり、自分の世界に入ることが多い
5 聞かれたことや質問に答えられない、話を理解しているのかが分から
  ない
6 友だちと会話ができない、してもついていけない
7 人見知りが強い、緊張が強い
8 場面緘黙がある

 

★3才以降、言葉を使ったコミュニケーションの発達に必要な能力

 実は、3才は、それ以降言葉を使ったコミュニケーションが伸びるために必要な認知面、言葉、人とのかかわり、社会性などのいろいろな重要な能力が伸びていく時期になります。具体的には、次のようなものです。

1 言葉の動詞や形容詞が分かり、ものごとの意味が分かってくる
2 短期記憶力が伸び、文章の表現力が大きく伸びる
3 長期記憶力が伸び、同一のイメージを長時間もち続けることができる
  ようになる
4 時間の概念の形成(過去・現在・未来)
5 「心の理論」が発達し、「意図的コミュニケーション」ができるよう
  になる
6 ごっこ遊びができるようになって、想像的な遊びができるようにな
  り、「意図的コミュニケーション」のような高度なコミュニケーショ
  ンを発達させていく
7 「自分で自分の行動をコントロールする」という「自律性」が急速に
  伸長する
8 自分や人のためにウソをつく(自分の情動の表現の操作ができる)
9 それまでの大人中心のかかわりから、子ども同士のかかわりの段階に
  入っていく

 これらのように、いろいろな重要な能力が伸び、3才以降はギアが一段上がって、高度で複雑なコミュニケーションの段階に入っていきます。なので、すんなり伸びていく子どもさんもいれば、いろいろな理由でこの時期につまづいたり、足踏みをする子どもさんが出てくる可能性も十分にあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/03/02(火) 13:19 | izawa

 さて今回は、発語をするために必要な4つの発達の4つ目「伝え合う」です。この「伝え合う」は、発語だけではなく、発語以降の人間のコミュニケーションに重要な発達になっていきます。

 発語の前は、例えばお母さんとどのようにコミュニケーションをとっているかと言いますと、お母さんとは一日の日常生活の中の、食事、着替え、お風呂、遊ぶなど、いろいろな場面でかかわります。子どもさんはまだしゃべりませんが、お母さんの発する言葉を聞きながら、そして、もう一方では、言葉以外の「非言語的コミュニケーション手段」(例えば、声、動作、表情、視線、しぐさなど)を使って、お母さんと感情や意思などを「伝え合う」経験を重ねていきます。

 特にお母さんとは、緊密で情緒的な「愛着関係」を基盤にして、意図的にコミュニケーションをしたいという「内的欲求」が、その「伝え合う」という発達の手助けをしていると考えられます。

 このお母さんとの言葉と、そして言葉以外の「非言語的コミュニケーション」の両輪によって、高度で繊細ないろいろな種類のコミュニケーション能力が育ち、更に他の3つの発達と結びつきながら機が熟した時、「伝えたい」という想いが「発語」という言葉となって表現されると考えます。

 さて、発語以降のコミュニケーションが、更に重要になってきます。言葉によるコミュニケーション、そして、「非言語的コミュニケーション」の二つが当然考えられますが、3才から4才以降、人間のコミュニケーションがどんどん高度で、複雑で、繊細なものになっていきます。

 この時期のコミュニケーションの発達のつまづきや遅れなどが「幼児期の子どもさんの発達の遅れ」の重要な位置を占めています。つまり、「発達療育」の対象となる子どもさんたちです。こういう子どもさんたちが、医学的に見ると「自閉症」と診断される可能性が高いということです。

 それに対して、「発達療育」では、「障害以外」から、つまり「発達に必要な生活体験が不十分だったのではないか」という視点から、原因を考え、それに応じて、不十分と考えられる生活経験を積み重ねることによって、発達の遅れや問題行動を改善していこうとしているということです。

 「発達療育」では、今回の「伝え合う」は非常に重要なキーワードなのです。

 以上です。

 

 

 

 

 

 

2021/03/01(月) 14:17 | izawa

 療育教室 楽しい広場の「発達療育」では、、幼児期の子どもさんが発語をするために必要な発達を4つ考えています。前回、前々回に続き3回目の今回は「言葉を聞く」です。

 乳幼児は、誕生してからいろいろな音や言葉を聞いていきます。「言葉を話す」ということは、生活の中で聞いた言葉を記憶し、思い出し、その聞いた言葉と同じように発音するということです。つまり、言葉を聞いていなければ言葉は出てこないということです。

 しかし、ただ聞いていれば言葉が出るかというと、そうではありません。出てくる言葉が「意味ある言葉」でなければなりません。「バナナ」を見て、「ねこ」と言うと、意味ある言葉にはなりません。

 子どもさんたちは、発語までにいろいろな言葉を聞いているはずですが、その言葉と対象の物が正しく結びついていなければ、言葉を覚えたことにはなりません。

 

言葉を学習するとは?

 お母さんを基本とした大人とのかかわりの中で、適切なタイミングで、共通の関心対象のものと、大人が発した言葉が結びついたとき、新しい言葉が学習されます。

 例えば、これまで何度かお母さんと一緒に食べたことのある「バナナ」が、今またお母さんと一緒にいる状況で、共通の関心対象として目の前に出てきたとします。
 これまで何度か食べて「おいしいものだ」ということも分かっていて、さらに今、バナナが目の前に出てきた状況でお母さんが「バナナ」と言う言葉を発すると、これまで何度か聞いてきた経験もあり、この目の前にあるものが「バナナ」という名前であることを学習します。
 こういう子どもさんは、まだ発語がなくても、例えば、目の前に5~6枚の絵カードの中から「バナナはどれ?と聞かれると「バナナ」の絵カードを指さしたり、取ったりできるはずです。

 ここで大切なことは、大好きなお母さんと一緒にいる状況で、お母さんと共通の関心対象として「バナナ」が目の前に出てきて、それに言葉が発せられたので、その言葉が、「バナナ」という物と結びついて印象づけられ、学習して覚えていくということです。こういう場面で「バナナ」という言葉を学習すれば、バナナを見て「ねこ」とは覚えません。

 つまり、意味ある言葉として新しい言葉を学習するということは、特に発語前後の幼児期の子どもさんにとって、お母さんを中心とした周りの大人とのかかわりが必要条件になるということなのです。

 今回は以上です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/02/28(日) 14:27 | izawa

 発語のための発達、2回目の今回は「離乳と食べる」です。

 赤ちゃんは、生まれてから4か月くらいまでは、母乳やミルクを飲んで育ちます。そして、5か月ころから、離乳食を始めます。

 さて、この「離乳」の目的は何でしょう?それは、二つあります。
(1)乳児の本能的な母乳やミルクを吸って飲み込む食べ方から、硬い食
  べ物を飲み込みやすくするために細かく「かみつぶして」食べるとい
  う、いわゆる「そしゃく能力」を赤ちゃんに身に付けさせる。
(2)離乳食を食べる経験を通して、母乳やミルク以外のいろいろな「
  に慣れさせる」。

〇最初は、ドロドロ状の食べ物を少しずつスプーンで与え、いろいろな味
 になじませるようにします。6か月くらいになったら、水分の少ないマ 
 ッシュ状の食べ物を与えます。
 
〇7か月から8か月くらいになると、スプーンから上手に食べることがで
 きるようになり、少しくらい粒がある食べ物でも「舌で押しつぶす」よ
 うに食べるようになります。そして、更に形のある食べ物を「舌と上あ
 ごで押しつぶして食べる」ようになります。
 
〇離乳の後期の9か月から11か月ころになると、「そしゃく」ができる
 ようになります。

  *「そしゃく」とは
     → 噛み砕かないと飲み込めないような硬い食べ物を奥歯(ま
       だ臼歯が生えていないので歯茎の奥)で、噛み砕いて食べ
       ることを言う。
     → 「そしゃく」の際の下あごの運動は、前後左右に回旋を伴
       った、あたかも「擂りこぎでごまを摺りつぶす」ような運
       動である。

 「そしゃく」によって、唇でスプーンから食べ物を口の中に取り込み、舌で奥歯の上に運んで、噛み砕いて飲む、という食事に関する口腔機能は完成します。

  *「口腔機能」とは、
     → 食べ物を口の中に取り込み、「そしゃく」をして飲み込み
       やすくするための、唇、舌、あご、のどの運動の共同作業

〇12か月を過ぎるとだいたい離乳は完了し、コップから上手に水を飲む
 ことができたり、大人とほぼ同じ食べ物が食べられるようになります。     

 

 さて、離乳が完了した頃になると、食べるための舌、唇、あご、のどの口腔機能がどんどん発達していきますが、その口腔機能は同時に発語にも生かされていきます。
 皆さん、一度五十音を発音してみてください。唇、舌、あご、のどが複雑に使われていることを実感されると思います。
 このようにして、食べることで発達した口腔機能ですが、この後、発語にも生かされてくるのです。「食べること」も、発語の発達に必要なのですね。

 今回は以上です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/02/27(土) 12:21 | izawa

 今回から、療育教室 楽しい広場の「発達療育」において、考えている幼児の発語までに必要な4つの発達について、お話をしていきたいと思います。

 まず今回は「声を出す」です。

 発語までの基本的な流れを考えてみますと、
   「息を吐く」
     ↓
   「声を出す」
     ↓
   「喃語(なんご)~言葉らしき音」
     ↓
   「発語~意味と結びついた音」

 まず、人間として誕生して赤ちゃんは肺で呼吸をし始めます。つまり息を吸ったり吐いたりします。でも、それだけでは声にはなりません。では、どのようにして「声を出す」か。
 そうですね、「泣く」のです。本人はもちろん、周りの大人も別に意識してさせているわけではありません。おなかがすいたり、むずがったりしたときに自然と泣きます。そこで、「声を出す」ことを学んでいくのですね。「泣くのは赤ちゃんの仕事だ」とは、まさしくその通りなのですね。お母さんを始め、周りの大人とのコミュニケーションの第一歩、そして発語に向けての第一歩なのです。

 座位が取れて、その後、歩きはじめる頃になると、お母さんや周りの大人の人たちとかかわる活動の場面や範囲、量も広がり、発する声も種類が増えてきます。「アー」「ウー」「ブー」「キャッ」など、周りの大人と楽しくかかわる中で、自然とたくさん声を出していきます。それが、言葉につながっていくのですね。

 よく、お母さんがお子さんと一緒に遊んだり手遊びをしたり、絵本やアニメを見たりしている中で、「ワンワン(犬)」「ブーブー(車あるいは豚さん)」「モー(牛)」「ニャオ(猫)」「ふー(息をふく)」「えーん(泣く)」などの音や動物の鳴き声などを言います。これは言葉の「音を聞く」ということ、そして、言葉の音を物の名前や動作の名前などと結び付けていく、という面で、とても良い経験です。この経験の積み重ねの中で、お子さんが声を出しているうちに「喃語(なんご)」、つまり言葉らしき音になっていくと考えられます。

 こう考えていくと、「声を出す」ということは、お母さんを中心とした大人とかかわっていくことにより、できてくるのだと分かります。

 今回は以上です。

 

 

 

 

2021/02/26(金) 13:05 | izawa

 前回までは6回、「認知心理学から見た自閉症」について説明をいたしました。今回からは、療育教室 楽しい広場に来られる子どもさんの発達の不安で一番多い「発語の遅れ」の原因と改善の方法について、説明をしていきたいと思います。

 発語の遅れとは、2才、3才、4才になっても発語がない、あるいは10個程度のわずかしかない、という場合を想定しています。

 我々「発達療育」では、幼児期の子どもさんが言葉を出すための発達的構造とその流れを次のように想定しています。

 

  =発語に必要と考えられる発達的構造と流れ=

★基本的に母親を中心とした大人とのかかわりの中で、特に次の4つ発達を積み重ねていくことが必要と考えます。

          ↓

★発語に必要な4つの発達

1 声を出す
2 食べる
3 言葉を聞く
4 伝え合う

          ↓

★そしてこれらの発達が互いに結びつきながら積み重なることにより、喃語や言葉らしき音を発する。

          ↓

★相手に「伝えよう」として、それまでの伝達手段であった声・操作・表情・視線などの他に

          ↓

      場に応じた言葉を発する

(具体例)
  ママ、パパ、アンパン、ブーブー(車)ワンワン、やだあ、はい
  もも、あお、あか、あけて、アイス、バイバイなど。

 

 次回から、「発語に必要な4つの発達」について考えていきたいと思います。

  

 

 

 

 

 

 

2021/02/25(木) 14:08 | izawa

 療育教室 楽しい広場の療育相談やことばの教室に来られるお子さんたちの中で、来られる前に1才代、2才代、3才代で医師から「自閉症」の診断を受けているお子さんが非常にたくさんおられました。その際、お子さんとかかわりながら、そしてお母さんやお父さんからお話を伺いながら「このお子さんは自閉症なのか?」を確認していきます。その立場は、これまでも説明してきましたが、認知心理学の立場からです。

 療育教室 楽しい広場の療育に2才代で来られた場合、その場合はほとんどが「発語の遅れ」の不安で来られます。ということは、「言葉を出す」「普通にしゃべる」が目的となっていきます。そのお子さんに1才代や2才代で「自閉症」の診断が出ていても、本来、認知心理学的に見たとき、自閉症の診断が出せるような発達段階に来ていませんから、指導する立場からは、問題にしません。ただ、それをとても心配されるお母さん、お父さんがおられます。その場合は、発達的に見て、発語のために必要だった生活経験の不足や偏りなどの原因を見つけて説明をし、「言葉を出す」ためにどうするかに焦点を絞っていきます。そして、改善の結果が出てくると、ひとまず安心をされることが多いです。

 そして、3才を超えて、療育教室 楽しい広場に来られて、すでに「自閉症」の診断を受けている場合です。お母さん、お父さんがそれほど気にされていない場合は、さっそく発達の不安の原因を発達的視点から探し出し、改善委必要な生活経験を積み重ねていくことに焦点を絞っていきます。
 ただ、残念ながら多くのお母さん、お父さんはその診断に強い不安をもたれています。お子さんが3才以降であれば、療育教室 楽しい広場では「自閉症かどうかの判断のポイント」をもっています。

 それが「意図的コミュニケーション」です。これは、言語及び非言語的コミュニケーション手段(例えば、声の大きさ・トーン、表情、動作・しぐさ・雰囲気など)を使って、いろいろなシグナルを送り合い、”意図(心の状態)”を伝え合うという、高度で繊細なコミュニケーションです。そして、この「意図的コミュニケーション」に必要不可欠なものがあります。それが「心の理論」です。

 さて、この「心の理論」は、認知心理学の立場から自閉症を考えるとき大切なキーワードでした。つまり、「自閉症児には心の理論が欠けている」ということが「自閉症の原因」と考えられています。「心の理論」がはっきりした形でその能力が伸びてくるのが、だいたい3才半以降であることを考えると、「意図的コミュニケーション」ができていれば、発達の不安があっても、「自閉症とは考えられない」ことになります。

 意図的コミュニケーションの具体例としては「人をみて行動する」ことができているかを確認します。「よくも悪くも、お母さん、お父さん、先生の顔色を見ながら行動している」「お母さんに怒られたらお父さんの所に逃げていく」「自分に優しい先生の所には行くが、恐い先生の所には近づかない」などです。つまり、いろいろな手段を使って相手の”意図(心の状態)”を感じ取っているからこそ、そういうことができるということです。

 今回の結論は「意図的なコミュニケーションができれば自閉症とは考えられない」ということです。

 我々の「発達療育」においては、発達的視点から原因を明らかにし、必要な生活経験を積み重ねることで発達の不安を改善していきますが、その初めに、どうしても「自閉症の診断」がついていることに強い不安を親御さんがもたれている場合は、「自閉症の可能性があるかないか」を判断し、親御さんに伝えます。ちなみに、これまで、「知的な発達の遅れがあるかもしれない」という場合は、ありましたが「自閉症の可能性がある」と判断したことはほとんどありません。

 でも、それでも、更に子どもさんの発達の不安が改善されても「障害」という言葉は、親御さんの、特にお母さんの脳裏に残っていて、なかなか消えないようです。この「障害の呪縛から解放」も、早期療育を行うものの務めでもあると考えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021/02/24(水) 14:27 | izawa

 これまで、認知心理学から見た「自閉症の原因」について、このブログで説明してまいりました。

 認知心理学のウタ・リス氏たちの提唱した認知障害説から見て「心の理論」が欠けているのが自閉症の原因です。「心の理論」とは、「人の心の状態を推測し、それに基づいて行動を解釈し、予測する」ということです。そして、その「心の理論」という能力に必要な重要な要素である「人の心の存在の理解」というものが、健常の子どもさんでも、3才半以降からではないと発達しない、ということが分かっています。

 ということは、個人差を考えても、発達的に見て1才代、2才代、3才代では「心の理論」が十分発達していない、ということです。そこから考えますと、1才代、2才代、3才代では、認知心理学の立場から「自閉症の判断はできない」ということになります。4才代、5才代、6才代になって判断することが適切であるということになるのです。

2021/02/23(火) 15:18 | izawa

 前回のブログで、人間にとって高度で繊細な、そして重要なコミュニケーションである「意図的コミュニケーション」について、そしてそれには「心の理論」が重要な役割を果たしていることをお話しいたしました。

 今回は、子どもの場合の「意図的コミュニケーション」について、考えてみます。

 例えば、幼稚園や保育園で言う年長さんくらい、だいたい5~6才くらいの子どもさんが、お母さんとおうちで遊んでいて、何度言われてもおもちゃの後片付けをしないので、お母さんに怒られたとします。しぶしぶ後片付けをし、お菓子が食べたくなったのでお母さんの所へ行き、「ママ、もう怒ってない?」ときいたとします。その時お母さんは両手を鬼の角のようにして「怒ってるぞう!」と言いながら、表情はニヤニヤしていたとします。
 このとき子どもさんは「ママはもう怒っていないな」と感じ取ります。つまり、お母さんの言葉や動作は怒っているように見えるけれど、声の調子や表情や雰囲気が優しいと感じ、もう怒っておらず、「いつものママだ」と判断しました。そして、お母さんの方も、そういう意図的なメッセージを伝えたということになります。
 この場合は、お母さんが言葉以外のいろいろな手段を使って「意図(心の状態)」を子どもさんに伝え、子どもさんがそれを受け取ったということです。

 

 

 

 

 

2021/02/22(月) 14:53 | izawa

 1990年代のイギリスのウタ・フリス氏を中心とした政府機関の自閉症研究グループが、認知心理学の立場から、「自閉症児にはなんらかの理由で心の理論が欠けている」という説を唱えました。「心の理論とは何か?」については、これまでに、ブログの中で説明をいたしました。

 「心の理論」は、人間のコミュニケーションの中で、重要な役割をしています。それを説明するために、ウタ・フリス氏たちは、人間のコミュニケーションを考えるとき、二種類のコミュニケーションを想定しています。

 それは「言葉どおり(むき出し)のコミュニケーション」、そして「意図的なコミュニケーション」の二種類です。

 「言葉どおりのコミュニケーション」とは、言葉どおりのメッセージを伝達することだけにかかわるコミュニケーションです。例えばスーパーの果物売り場で、自分が近くにいた店員に「この黒いものは何ですか?」ときいたとします。「アボガドです」と店員は答えます。これは、言葉どおりのコミュニケーションです。

 もう一つの「意図的コミュニケーション」とは、言語的、あるいは非言語的な(例えば、声の大きさ、声のトーン、表情、動作、しぐさ、視線など)のシグナルを使って、相手の”意図(心の状態)”を推し量りながら、あるいはこちらの”意図”を伝えながら、相互理解をしていこうとするコミュニケーションです。
 前述のスーパーの店員に「この黒いものは何ですか?」と聞いたとき、店員が棚に貼ってある「アボガド」の名札を指さして、「アボガドです」と無表情に抑揚のない声で答えたとします。それを聞いて、こちらは「これがアボガドか」と分かりましたが、同時に「この店員は、何か聞かれたことが不快に思ったのだろうな」と感じ、店員もそういう”意図”を意識的か無意識的かにかかわらず、自分に送ったのだろうと判断します。これが「意図的コミュニケーション」です。とても高度で繊細なコミュニケーションですが、人間にとっては重要なコミュニケーションです。
 そして、この「意図的コミュニケーション」にとって欠かせない重要な能力が「心の理論」です。つまり「人の心の状態を推測し、それに基づいて行動を解釈し、予測する能力」がなければ、相互理解を可能にする「意図的コミュニケーション」は成り立たないということです。ということは、自閉症児には、この「意図的コミュニケーション」は難しいということになるのです。。